8.まとめ-人生も仕事もすべては“心の持ち方”次第 22
8.まとめ-人生も仕事もすべては“心の持ち方”次第 22
これに対して、“どうすれば人々に心から喜んでもらえるか”という考え方は、立ち位置が“顧客となる人々の側”にあり、“人々の視点”から“人々が心から喜ぶのはどのような場合か”“そのために自社は何ができるか”という点に意識をフォーカスするものである。“自分(自社)の利益”については、少なくともこの段階では、“自社の利益”のことは、一旦脇に置いて、“人々を喜ばせること”だけに意識をフォーカスしていくところがポイントである。これを同時にやろうとすると、コストに引っ張られて、顧客の利益(喜び)が削られることとなってしまうからである。
松下幸之助は、「ものみな原因あり」と述べ、「一定の成果をあげようと思えば、それに相応しい原因をつくらなければならない。」と考えた。とすれば、ここでは、商売が成功するのに相応しい原因を創ればよい。それこそ、“人々を心から喜ばせること”であり、その目の前の商品について具体的にどうすれば人々が心から喜んでくれるかを考え抜くことなのである。“人々を心から喜ばせること”ができるような商品・サービスさえ生み出すことができれば、“喜んだ人々”の支持を得て、口コミで広がり、結果としてその商品は売れ、商売は成功する。それは必ず成果につながることが明白だからである。
この「商いの原点」を具体的に実践していくためには、本気で“人々を心から喜ばせたい”と思わなければならない。そのことを繰り返し“強く願い”、それを自分の“強固な信念”となるまで高めていくことが必要である。そうすると、無意識のうちにその“信念”に沿って、それを実現する方向で考え、行動するようになる。
また、“強く願う”ことにより、脳の機能が“相手を心から喜ばせること”にアンテナを立てて、そのためのヒントやアイデアなどの関連する情報を地引網のように集めてくれる(焦点化効果)。それ故、どうすれば人々を心から喜ばせることができるかという、その手段や方法は、後から浮かんでくるのである。
松下幸之助が、このように“人々を心から喜ばせること”を重視していたことは、次の言葉からも窺われる。「商売とは、感動を与えることやな。喜びを与えることやな。~つまり品物を売って、便利で具合いい、と喜んでもらうことを先に考えんといかん、感動とか喜びを、絶えず先に与えるという商売でないといかんわね。」
もちろん、“人々を喜ばせる”アイデアを思いついても、“利益”を上げることができなければ、ビジネス、即ち“事業”としては成り立たない。それ故、次の段階として、「収支を立てること」、つまりさらに知恵を絞り、創意工夫を働かせて、企画設計や材料の調達から商品が顧客に届くまでのサプライチェーンの中の一つひとつのプロセスを最大限効率化を図り、無駄なコストを削減して、利益を生み出し、“事業”として成り立つようにすることが必要だ。
それら両者ができれば、利益というものは自然に儲かるのだと松下幸之助は言う。「あれ(筆者注:金)は、自然に儲かるのです。~なぜ自然に儲かるのかというと、私は一生懸命仕事に取り組んでいます。~ものをつくるときでも、これでいくら儲かるといってつくるよりも、これをつくったらみなが喜ぶだろうなあと、こういうことをまず考えているのです。婦人が第一喜ぶだろうなあと考えるわけです。」(「社員稼業」pp.265-266)
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パナソニック株式会社の創業者である“松下幸之助の経営哲学”の現代の諸問題 への応用として、最近の話題等をテーマにしたブログです。最新の記事は、 「松下幸之助、パナソニックの惨状に津賀一宏社長を叱る!⑪」です。