8.まとめ-人生も仕事もすべては“心の持ち方”次第⑳
8.まとめ-人生も仕事もすべては“心の持ち方”次第⑳
“感謝すること”は、“喜び”を生む。“感謝する力”がついてくれば、それだけ多くの「喜びを知る」ことができる、即ち、“自分にとって嬉しいこと”により多く気がつくようになる。それ故、そのような人は、“非常にしあわせな人”であり、「感謝の心が高まれば高まるほど、それに正比例して幸福感が高まっていく。」と松下幸之助は言う。
また、こうして“感謝する力”が鍛えられると、さらに立場を変えて、“お客様の立場”に立って考える能力、つまり、“どうすれば人々の役に立てるか”、“どうすればお客様に心から喜んでいただけるか”ということに気づく感度や能力も同時に高まってくる。自分が感謝できて(喜びを知って)初めて、人がどういうときに感謝する(喜ぶ)のかがわかるようになるからである。即ち「感謝の心を忘れない」という第三の意味を実践することによって、第二の意味「相手の立場に立って考える」ことがより深く、繊細に実践できるようになるのである。
「一商人なりとの観念」の三つの意味は、それを実践する場合には、むしろ今見てきた順序とは逆の順序で実践していくべきであり、その順で行うことによって、その効果も最大限に発揮しうるものと考える。この点、松下幸之助は、必ずしも明確に述べていないが、以上の考察からは、そのように考えるのがより合理的な結論と言えるのではないだろうか。
まず「感謝する」ことによって、心の中の不平や不満、あるいは怒りなどの否定的な感情とエネルギーを解消し、“私心へのとらわれ”から抜け出して、“とらわれない素直な心”になり、意識を内から外へ向け、視野を拡げ、それ以外のことにも心を解き放つとともに、顧客に向かって「恩に報いていく」無限の活力(パワー)を得る。そのようにして“我執”を消して、あるいは、抑えて、「相手(顧客)の立場に立って考える」ことにより、本当に相手に成り切ることができ、“顧客が真に求めるもの”に気づくことができるのである。それこそ、本当に「人々の役に立つ」ことであり、それを実現していく。その一方で「収支を立てる」知恵と工夫を凝らす。そして、それらを“感謝の心”が生み出す無限の活力と「人々の役に立つ」のだとの“使命感”をもって、遂行して行く。そうすれば、途中で遭遇する如何なる困難や苦痛をも乗り越え、実現していくことができるであろう。
では、“感謝の心”ひいては“一商人なりとの観念”を忘れないためにはどうすればよいか?
この点、松下幸之助は、“感謝の心”を忘れる原因は、大会社になって“安定しすぎる”ことにあると考えて、会社の中に敢えて“不安定な部分”を創り出して行くことが、その対処のための処方箋だとする。(「経営秘伝」pp.167-168)
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