• 宮崎 勇気

7.補論②困難を乗り越える経営:禍転じて福となす⑨

7.補論②困難を乗り越える経営:禍転じて福となす⑨


 松下幸之助は、不況によって今まで見えなかったことが見えて、手を打つことができた事例を挙げて、次の様に述べている。「要するに、昨年(昭和30年)は、デフレ政策によっていろいろな困難にも遭い、そのために組織の変更や機構の改革、徹底した経費の節減も行ってきたのでありますが、その結果、お互いの仕事のやり方や経営の進め方に、大きな進歩を見出すことができたのであります。すなわち、今までわれわれが当然のこととして見逃していたことを、この機会にさらに深く突っ込んで反省することができたわけで、そう考えると、昨年の不況に対しては、われわれは一面において感謝すべきものがあると思うのであります。」(昭和31年経営方針)


 具体的には、不況に際して、四本部制を実施し、各本部長には、重役がそれぞれあたり、従来、松下幸之助がいくつも兼務していた仕事も一切解いて、私も社長の業務に専念することとし、毎週定例に本部長会議を開くこととしたのである。この経験から次のように述べている。「まず独断専行の過ちが是正されたことであります。独断専行はいかに確信があると思っていても、そこに間違いや行き過ぎが起こるのは当然と考えます。私にしても今まで、これはいいと思って進めたことで、概ね失敗と言えることが案外多いのではないかと思います。それが本部長会議を行うようにしてからは、互いに意見を出し、担当部門の実情を交換して検討を加え、これが重役会の決定によって皆さんに伝達されるようになったのであります。以来、これが一つの転機となって、おいおい経営の上に成果をあげるようになったのは事実であります。」


 また、松下幸之助は“不景気”というものをより大きな時間軸から捉えた。曰く、“不景気”というもの「その時点時点で見る」と「感心しない」ものであるが、「全体について見たら、不景気の過程もまた偉大なる生成発展の一つであるとも考えられる。」という。これは、先に紹介した『生成発展』という“心の窓”から眺めることによって、目の前の“不景気”という現象の捉え方が前向き積極的なものに変わる“リフレーミング”の効果を持つのである。「不況またよし」と考えるところに不況克服の第一歩があるというわけである。それによって、それまで見えなかった将来の発展に向けた現在の課題とその解決策が見えてくるからである。


 上に述べたように“不景気”を積極的に捉えた松下幸之助であるが、初めからそのように考えることができたわけでは実はなかった。この点次の様に述べている。「私は、事業を始めた当初は、好景気・不景気 に直面してその都度、喜んだり、多少の心配をしたりしていました。しかし、よく考えてみてふと自分の心の持ち方、考え方によって、いいときはいいとして生かすことができるが、悪いときは悪いとしてそれをまた生かすことができるはずだと思うようになりました。」


 その結果、松下幸之助は、次のような境地に達するのである。「好景気よし、不景気よし、ということで、自在に動けないようでは、経営の適格者とは言えない。」さらに、「商人には好況・不況はない、いづれにしても儲けなければならぬ」(商売戦術三十カ条 第三十条)


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