• 宮崎 勇気

7.補論②困難を乗り越える経営:禍転じて福となす⑧

7.補論②困難を乗り越える経営:禍転じて福となす⑧


 第二に、物事を様々な角度から見る“複眼思考”である。(松下幸之助自身はこの語を使っているわけではない。)


 人間は、自分の関心のある事項だけを見る傾向がある。裏を返せば、自分の関心のない事項を見ようとはしないものである。人間の関心事項と言えば、『自分のこと』、特に自分の得になることや好きなことである。逆に自分の損になることや嫌いなことは見ようとしない。『臭いものには蓋』をするのだ。逆に、不況を目の前にすると、人は悪いことしか浮かばない。まさか、そこに良い点があるとは夢想だにしない。しかし、松下幸之助は違う。曰く、「物事にはいい面と悪い面がある。われわれ商売してる者は、物事の一面だけ見たらあきまへんわ」(名和太郎著「松下幸之助 経営の真髄を語る」p.53)と述べて、物事を常に良し悪しの両面から見ることを常に心掛けていた。松下幸之助は、言う。「発想の転換ということはさかんにいわれるが、実際はなかなかむずかしい。それはみずから、自分の心をしばったり、せばめているからである。だから大事なことは、自分の心をときはなち、ひろげていくことである。そしてたとえば、今までオモテから見ていたものをウラから見、ウラを見ていたものをオモテも見てみる。そういったことをあらゆる機会にくり返していくことである。」(「指導者の条件」p.201)


 そうすると、業績の好調なときには、どこかに不具合や不十分なところがないかという視点から、事業活動を客観的に検証することで、改善すべきことが見つかるし、逆に、不況や困難に直面したときには、悪い面だけを見るのではなく、それらの“良い面”に着目して行くと、それらが見えるようになり、それらを活かして行くことができるようになる。人間は、『万物の王者たる偉大な存在』であり、人間を含む「万物の本質を活かす」能力をも有しているとするとともに、「この世の中に存在するものでムダなものは一つもない」と喝破した松下幸之助の面目躍如たるところである。


 例えば、“不景気”というものは、世の中では一般的に“悪い事”と考えられている。しかし、その“不景気”も“複眼思考”で見てみれば、“良い面”もあることに気づく。松下幸之助は言う。「不景気なるがゆえにはじめて得られるものがある。不景気になったために知らなかったことを知った・・・ということがある。それによって次の手が打てる。」(「松下幸之助一日一話」p.12)


 例えば、池の水が無くなったときに、池の中が浮かび上がって見えてくるように、不景気だからこそ、それまでは見えなかった会社の欠点が明確に浮かび上がり、また、不景気という厳しい環境の中でこそ人材、特に次世代の経営者も育つのだと言う。そして、そのような危機的な状況だからこそそこから抜け出すために従業員の心も一致団結して“改革”をやり切ることができるのだとして、次の様に述べている。「不況時には心の改革ということが行われ、それが将来の発展の基礎になるのです。そう考えますと、不況は必ずしも悲観するものではありません。むしろ知恵才覚が出てきて、お互いの考えが進んできて、さらに勇躍努力することができる新たな出発のときだと言える。オロオロせず、気を引き締めて真剣に対処すれば道もみつかり、むしろ面白いとさえ言えます。」「不況というものは、好況の時に生じた社内のゆるみを引き締め、改革をはかる格好の機会で、だから、日頃からそういう信念にたっていれば、不況は不況でそれなりに大いに生かすことができる。その意味で、私は、“不況というものも企業発展の好機である”との信念を持ってこれまで対処してきた。」


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  ニック株式会社の創業者である“松下幸之助の経営哲学”の現代の諸問題への応用とし    て、最近の話題等をテーマにしたブログです。最新の記事は、   「成功者の条件~自分の潜在能力を最大限に発揮するために~④」です。



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