• 宮崎 勇気

7.補論②困難を乗り越える経営:禍転じて福となす④


7.補論②困難を乗り越える経営:禍転じて福となす④

 第三に、『ことごとく生成発展と考えること』を信念とし、あらゆる現象を『“生成発展”という心の窓を通してながめ、かつ、考える』ことを一貫して実践したことである。

松下幸之助は、宇宙、自然、社会は限りなく生成発展するという宇宙観・自然観・社会観(“生成発展の原理”)を前提とし、経営者に対しても『ことごとく生成発展と考えること』を求めた。(「実践経営哲学」p.15)曰く、「限りない生成発展という自然の理法が、この宇宙、この社会の中に働いている。その中でわれわれは事業経営を行っている。~そのことに基礎を置いて私自身の経営理念を生み出してきているわけである。」(「実践経営哲学」p.16)「そういう明確な認識が根底にあってこそ、いかなる場合においても真に力強い経営を展開していくことが可能になるのである。」(「実践経営哲学」p.18)

 松下幸之助は、このような物の見方を自身生涯を通して貫くとともに、これが経営の根本理念の一つであると強調するのである。曰く、「すべての事業を“生成発展”という心の窓を通してながめ、かつ、考えることは、私の人生観の中軸であり、我が社経営の根本理念の一つである。」(社史資料巻頭言より)

 そうすると、何が起こるか?

 松下幸之助は言う。「困難に直面したときに、それをどう考え、処置するかで、飛躍か後退か決まる。不安を抱き、心配したり、誰が悪いと憤慨しても、そこからは何も生まれない。心も萎縮し、知恵も出てき難い。」そして、この『生成発展という心の窓』は、「不景気も、病気も、失敗も、死も、生成発展の姿や。何が起こっても、生成発展の一こまやと思うたら、恐れるものはありませんわ。」(名和太郎著 「松下幸之助経営の真髄を語る」p.54)との本人の言葉の通り、自然の摂理から既に決まっている“将来の成功”から現在の目の前の“不況”や“困難”を見ることによって、その捉え方が変わる、いわば“魔法のメガネ”なのである。即ち、目の前の“不況”や“困難”は、それで終わりというものではなく、“将来の発展へのプロセス”に過ぎず、しかも、将来の成功を実現するために乗り越えるべき“課題”を教えてくれるものだという捉え方となる。現代のアメリカで起こった神経言語プログラミングに『リフレーミング』という技術があるが、それと同じ効果を持つ“魔法のメガネ”である。

 その結果、意気消沈したり、悲観したりするのではなく、当初の高い志を維持したままで、将来の成功を手繰り寄せるために必要な目の前の課題の克服に向けて真剣に検討し、知恵と工夫を生み出すことが可能となるのである。このようにして“逆境”を“より大きな発展への転機(チャンス)”に変えることが可能となる。(“禍転じて福となす”

 第四に、この“生成発展の原理”を前提として、経営者たる者は「必ず成功すると考えること」が不可欠であると強調する。曰く、「経営というものは、正しい考え、正しいやり方をもってすれば必ず発展していくものと考えられる。それが原則なのである。」(「実践経営哲学」p.54)と考える。さらに「私は、基本的には企業経営はそのように外部の情勢に左右されて、うまくいったり、いかなかったりするものではなく、本来はいかなるときでもうまくいく、いわば百戦して百勝というように考えなければならないと思う。」(「実践経営哲学」p.55)とも述べている。

「必ず成功すると考えること」によって、何が起こるのであろうか?

 この点、普通の人は、『勝負は時の運』とか『不景気だからうまくいかなくても仕方がない』と考えるのが普通であろう。あるいは、うまく行かない原因を他人や環境などの自分の外に求めることとなりがちである。松下幸之助は言う。「人間というものは往々にしてうまくいかない原因を究明し反省するよりも、「こういう情況だったからうまくいかなかったのだ。あんな思いがけないことが起こって、それで失敗したのだ」というように弁解し、自分を納得させてしまう。」(「松下幸之助一日一話」p.188)「人間一面うかつなもので、みずからが刻々にその原因をつくり出していると何となく気づいていながらも、いざ事が起こってみないと、それが身にしみて省みられない。」(「続道をひらく」p.158)

 ところが、「必ず成功すると考えること」によって、(不況であっても)成功するのが当たり前だとすれば、それがうまく行かない原因は自分の中にあると考えざるを得ないのである。即ち、松下幸之助が常々強調し、自身もその生涯を通じて実践したと言う『失敗の原因はわれにあり』との考えに到達する。これは、実際に他人や環境に何らかの原因がある場合であっても、最終的にそれらの原因を踏まえて自らの行動を決めてきたのは“自分自身”であるから、その失敗について自分も何らかの原因を与えていることは間違いないのである。目の前の行き詰った状況の“失敗の原因”を環境や他人など外に探すのではなく、自分自身の内に意識をフォーカスして行くことで、自らの“考え方”や“やり方”の中にその根本原因を見出すことができる。しかも、その原因を取り除くことは自分自身の考え方や行動を変えることによって可能なのである。

 ところが、このような自分自身の中にある“失敗の原因”を直視することは、自分を守りたいと考える“防衛本能”から、避けようとするのが人間である。『臭いものにはフタをする』のだ。そこを半ば強制的に“自分自身の中にある失敗の原因”に焦点を当てて、それを引っ張り出すことができるのだ。

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(お知らせ)関連のブログも併せてご覧いただければ幸いです。100周年を迎えた現パナソニック株式会社の創業者であ   る“松下幸之助の経営哲学”の現代の諸問題への応用として、最近の話題等をテーマにしたブログです。最新の記事は 「私たちは“仮想現実の世界”に生きている!9)現代における仮想の世界⑳:世の中の真の姿を見極める③」です。

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