• 宮崎 勇気

7.補論②困難を乗り越える経営:禍転じて福となす③


7.補論②困難を乗り越える経営:禍転じて福となす③

“心の持ち方”を選ぶと言っても、実はそう簡単ではない。不況などの逆境に直面したときには、そもそも他の選択肢が見えていないし、選ぶ“余裕”もないからである。

 経営の危機に直面した経営者が失敗するのは、不況などの経営環境の変化に意気消沈し、当初の高い志を失ったり、自分の利害や感情、自分のこれまで成功してきた経営スタイルなど様々なことに“とらわれ”て、視野が狭くなって、大事なことが見えなくなり、目の前の現象や環境の変化を自分の都合のいいように歪めて解釈し、決めつけてしまうことで、自分自身とそれまでのやり方を変えることができないまま、結局経営環境の変化に適応することができず、いわば自滅して行くことが多い。

 そこでは、自分の言葉や行動以前に自分自身の“心の状態”にこそ問題があるのである。そのような自分の心が自分の考えと行動となって現れるからである。その意味で、まずはそのような“意気消沈”した心の状態や“とらわれ”た状態から抜け出すことが先決である。

 そのために必要なものが、松下幸之助が『経営者に最も基本的な心構え』として強調する“とらわれない素直な心”である。“素直な心”“意気消沈”した心の状態や“とらわれ”た状態から心を解放してくれるのだ。

こうして、一旦“とらわれ”から心が解放され、特定の考えにとらわれない“中立的なポジション”に立つことで、視野が拡がり、それまで見えなかった他の情報や選択肢が見えるようになるのである。そして、それらの中からその時々の状況における最適な“心の持ち方”に気づいて、それを選択していくという「融通無碍の働き」ができるようになる。松下幸之助は言う。「人間が自らの願いを実現するためには、それを実現するにふさわしいものの考え方や心の持ち方、態度や行動をあらわしていくことが肝要である。その根底をなすものが“素直な心”ではないかと思う。」「真の素直な心になったならば、いかなる困難に出あおうとも融通無碍に対処して、みずからの歩みをきわめてスムーズに進めていくことができるようになると思います。」(「素直な心になるために」pp.56-58)

 このように松下幸之助は、伸縮自在の“人間の心”の特質を見抜いて、自分の心を鍛えて使いこなし、その時々の状況に最も適切な“心の持ち方”を自ら選んで行くことによって、“人間の心の弱さ”を克服するだけでなく、目指すべき方向に向けようとしたのである。そのようにして自分の心が変わることによって、目の前の現象の“捉え方”が変わり、自分の“考え”と“行動”が変わるのである。“心の持ち方”はいわば“魔法のメガネ”と言えよう。『人生も仕事もすべては心の持ち方次第』だと喝破した松下幸之助の面目躍如たるところである。

松下幸之助は言う。「人間の心の持ち方というものは、このように自由自在、融通無礙なものである。こういう考え方に立つと、困難と思うことでも逆に喜ばしいことになってくる。人間の長い一生の間には、ことは違っても、心の働きによって、どのようにも考えられるものがある。」(「物の見方考え方」pp.72-73)「楽観か悲観か、積極か消極か、我が心のあり方いかんで、ものの見方が変わってくる。見方が変われば判断が変わり、判断が変われば行動が変わって、おのずと結果も変わってくる。壁を乗り越え、いい結果を生むために肝心なのは、やはりまず自分の心のあり方ではなかろうか。」

 例えば、与えられた環境や状況が如何に過酷で困難なものであっても“心の持ち方”を変えることによってそれらをより前向きかつ積極的に捉え直し、それらをむしろ自分のために最大限に活かしていくということさえも可能となる。松下幸之助は、このようにして“禍転じて福となす”ことで、経営の危機を何度も乗り越えるとともに、むしろ逆に大きな発展へと導いてきたのである。

Copyright © 2019 Yuki Miyazaki All rights reserved.

(お知らせ)関連のブログも併せてご覧いただければ幸いです。100周年を迎えた現パナソニック株式会社の創業者である“松下幸之助の経営哲学”の現代の諸問題への応用として、最近の話題等をテーマにしたブログです。最新の記事は、「私たちは“仮想現実の世界”に生きている!9)現代における仮想の世界⑲:世の中の真の姿を見極める②」です。

#禍転じて福となす

5回の閲覧

最新記事

すべて表示

8.まとめ-人生も仕事もすべては“心の持ち方”次第 33

 とすれば、さらに重要なことは、人が心(潜在意識)の中に有する“信念”や“価値観”というものは、必ずしも自分にとって“良いもの”とは限らないということである。つまり、知らず知らずの内に自分にとって“悪い心の持ち方”をしてしまっている場合がありうるということだ。それは、潜在意識のレ

8.まとめ-人生も仕事もすべては“心の持ち方”次第 31

私たち人間が自分の周囲に発する意識のエネルギー(バイオフォトン)をコントロールしているのは、顕在意識ではなく、潜在意識であり、その潜在意識内に確立された“信念”と“価値観”に沿って、人は『常に意識を向け』意識と感情のエネルギーを発する。その結果、『その人が常に意識を向けていること

8.まとめ-人生も仕事もすべては“心の持ち方”次第 30

会社を倒産させた多くの経営者に共通に見られた現象で、最も排すべきものとして松下幸之助が繰り返し強調した『自分の利害や感情などの私心にとらわれた自己中心的な考え方』は、低い周波数のフォトンを発し、その影響を及ぼす範囲は狭く近い。これに対して、松下幸之助が目指した『物心共に豊かな人間

  • Black Facebook Icon
  • Black Twitter Icon
  • Black Pinterest Icon
  • Black Flickr Icon
  • Black Instagram Icon

Copyright © 2016 Yuki Miyazaki  All rights reserved.

This site was designed with the
.com
website builder. Create your website today.
Start Now