• 宮崎 勇気

7.補論②困難を乗り越える経営:禍転じて福となす⑪

7.補論②困難を乗り越える経営:禍転じて福となす⑪


 第四に、「日に新た」、即ち『時代の変化に適応して行く』ということである。


 不況などの困難に直面して、心が折れそうになったときに、この『日に新た』という概念は、『自社の事業活動は、時代の変化に適応しているだろうか?』という問いかけを自身にすることで、経営者に一つの思考プロセスを提起してくれる。松下幸之助は、経営理念は不変かつ普遍のものであるが、それを実際の経営に落とし込む“方針”“方策”は、時代の変化に応じて適応していかなければならないと考えた。かつては、成功したやり方であっても、今の時代に合わないものであれば、成果はあがらない。改めるべきは次々に改めるべきであると言う。それにより、困難克服の道を見出すことができるのである。


 それまでに自分のやり方で成功してきた経営者ほど、自分のやり方を変えることは難しい。いくら経営環境が変化し、客観的にはそれまでの自分のやり方がもはや通用しなくなっていても、そのことがわからないからである。人間は、自分の見たいことを見たいように歪めて見て、決めつけるものなのだ。自分に都合の悪い情報を意識から“削除”してしまい、認識することができない。また、仮に認識したとしても、やはり自分の都合のいいように歪めて評価・解釈し、そして、『自分のやり方を変える必要はない』と決めつけるのだ。そのようなことが起こる根本的な原因は、その経営者の自分の利害や感情などの私心への“とらわれ”にある。とらわれがある限り、目の前の現実を客観的に見ることができず、上のように経営判断を誤ることとなる。


 それ故、やはり“とらわれない素直な心”というものが経営者の基本の心構えなのだと松下幸之助は強調する。“素直な心”を持てば、“日に新た”を実行することができるようになるとして、次の様に述べている。「現状にとらわれることなく、常に何が正しいか、何が望ましいかということがおのずと考えられ、日に新たなものを生み出していくことができるようになる。」「どんな情勢の変化に対しても、柔軟に、融通無碍に順応同化し、日に新たな経営も生み出しやすい。」(「実践経営哲学」p.164)


 第五に、『失敗の原因はわれにあり』という考え方である。


 人は、困難に直面すると、それを他人や環境のせいにしがちである。部下が思うように動いてくれない、顧客が当社の製品の良さをわかってくれない、不景気だから仕方がない等々、共通するのは、“自分”を被害者の立場に置いて、『自分は悪くない』との結論を出すことである。人間の防衛本能とも言える。


 しかし、このような考え方は、やはり自分の利害や感情という私心にとらわれているところから、生じるものと言ってよい。自分の損になることや自分の嫌いなことから目を背け、“臭いものに蓋”をすることで、自分を守るのだ。その反面として、目の前の現実が客観的に正しく見えなくなる。そして、松下幸之助によれば、ほとんどの失敗の原因は自分自身にあるのであり、それらの自分自身の中にある“失敗の原因”に気づいて手を打つということが妨げられてしまい、困難を克服することができなくなるところにその最大の問題がある。


 松下幸之助は『失敗の原因はわれにあり』との考え方を“経営者の条件”として強調し、これを欠く者は、経営者としての資格を欠く者だと断じている。そして、自身、生涯を通じてこの考え方に徹したという。曰く、「何か失敗したり、問題が起こったりすると、だれでもその原因をとかく外に求めがちである。だれが悪い、彼が悪い、あるいは社会が悪い、運が悪いといった具合である。しかし、実際は、ほとんどの場合失敗の原因は自分にあると思う。事前に十分な計画をたて、行う過程でも慎重な配慮を怠らなければ、たいていのことはうまくいくものである。まして指導者ともなれば、ほとんど100%その責任を自分に帰さなくてはいけないと思う。」(「指導者の条件」pp.54-55)

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