• 宮崎 勇気

5)組織の力を最大限に発揮させる(3)“衆知を集める”①


5)組織の力を最大限に発揮させる

(3)“衆知を集める”①

 松下幸之助は、人の話を実によく聞いた。そして、たくさんの質問をした。それは、“質問魔”と言ってもいいほどであった。新入社員をもつかまえても、質問した。そして、人の話を聞くときには、机の上の物をすべてどけて、身を乗り出して、まさに全身全霊で聞くといった聞き方であった。それ故、話す方もついつい話すつもりのなかった“本音”までしゃべってしまうのである。

 このように人を引き込み、つい本音までしゃべらせてしまうような人の話の聞き方について、松下幸之助は、次のように述べている。曰く、「よく聴こうと思えば、自然に身体が前に出る。耳を傾ける。耳を傾ければ、一言一句がシンシンと胸にしみわたって言外の言すらも、聴こえる思いがする。だから、人の言葉が、わが身の血となる。肉となる。血となり肉となって、心ゆたかにさらに新しい知恵がわく。」(「続道をひらく」p.164)

 そして、松下幸之助は、経営においても、人の意見に耳を傾け、「衆知を集めた全員経営」に優る経営はないと考えた。それは、一つには、それまで多くの取引先を見てきた経験から、「発展している会社の社長は、悉く衆知を集めている」という事実を踏まえたものである。但し、ここで松下幸之助は、単に“衆知を集めた方がいい”ということを言っているのではないという点に注意する必要がある。つまり、経営においても“衆知を集めなければならない”と言っているのである。松下幸之助は、「衆知による経営が行われない限り、その会社はやがて行き詰まるだろうと思うんであります。」(1960年)と断言する。“衆知を集めなければ、いずれ会社は破綻する”と言うのだ。なぜ、そこまで言うのであろうか?

 経営をめぐる現実の世界やその変化がどのくらい見えているか(“物の見方”)や経営についての“物の考え方”ということについて、松下幸之助は、人間一人に見えることや生み出す知恵は限られていると考えた。曰く、「この世の中、本当は、わかっているよりも、わからないことの方が多く、知っているよりも、知らないことの方がはるかに多いのである。」(「続・道をひらく」p.180)「自分で物を考え、物を決めるということは、全体から見るとごく少ない。自分一人ではどうしても視野がせまくなる。自分がわかっているのは世の中の一パーセントだけで、あとの九九パーセントはわからないと思えばいい。あとは暗中模索である。」

 先に紹介した“群盲象を撫でる”というインドの格言の通り、象の一部だけを触って象の全体がわかったと“錯覚する”のは、“盲人”に限らず、目の見えている人々にも起こっていることだからである。実は、誰にも“全体”は見えていない。私たち人間は、自分の信念(自分が正しいと思うこと)や価値観(自分が重要だと考えること)を“軸”として、自分の見たいものを(一部だけを見て、それ以外を“削除”し)見たいように見て(“歪曲”)、決めつけている(“一般化”)からだ。物事の実相を、また、全体をありのままに見ることが難しいのである。特に、自分の誤った信念や価値観に“とらわれ”ている場合には、それらに偏った見方に“固定”されてしまう。この点、松下幸之助は、次のように述べている。曰く、「私たちはとかく、ものの一面にとらわれて自己の考えのみを主張していると、その背後に流れる大きな力を見忘れてしまうものです。そこから大きな失敗が表れてきます。」

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#衆知を集める

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