• 宮崎 勇気

4.自然の理法に従う経営 2)“とらわれない素直な心”③


4.自然の理法に従う経営 2)“とらわれない素直な心”③

 さらに、“素直な心”は、先に述べたように自分の心を“私心へのとらわれ”から解放するだけでなく、いわば何物にもとらわれない“ニュートラルな(中立的な)”心の状態を維持させ、それによって、初めて、松下幸之助の考える事業の経営に際してあるべき理想的な“心の持ち方”を“選択する”ことができるようにするという機能をも果たしている。言い換えれば、人間は、“私心”にとらわれている限り、いくら“あるべき姿”を人から提言されても、あるいは、“知識”として知っていても、それを“選択する”ことはできない。“とらわれた私心”が引き戻すからである。

 この点について、松下幸之助は、次のように例を挙げて述べている。曰く、「経営というのは、天地自然の理にしたがい、世間大衆の声を聞き、社内の衆知を集めて、なすべきことを行っていけば、必ず成功するものである。~しかし、そういうことができるためには、経営者に素直な心がなくてはならない。天地自然の理にしたがうとは、雨が降れば傘をさすというようなものだ~。雨が降れば、ごく自然に傘をさす、それが素直な心である。それを意地を張って傘をささないということは、心が何かにとらわれているからである。それでは雨に濡れてしまう。経営はうまくいかない。世間大衆の声に、また部下の言葉に耳を傾ける。それができるのが素直な心である。それを自分が正しいのだ、自分の方が偉いのだということにとらわれると、人の言葉が耳に入らない。衆知が集まらない。いきおい自分一人の小さな知恵だけで経営を行うようになってしまう。これまた失敗に結びつきやすい。」(「実践経営哲学」pp.111-112)

 このように“経営者にとっての最大の敵”である、“私心へのとらわれ”から自身の心を解放し、“事業の経営に最も相応しいあるべき心の持ち方”を自由自在に“選択する”ことができるようにする、松下幸之助の言葉でいえば、「人生でも仕事でも、すべては心の持ち方次第」だとし、そのために「自分の心を使いこなす」ためには、この“とらわれない素直な心”が不可欠であり、“鍵”となるのである。この点、松下幸之助は、次のように述べている。曰く、「経営者にこの素直な心があってはじめてこれまでに述べてきたこと(松下幸之助の経営哲学の他の理念)が生きてくる。」(「実践経営哲学」p.110)

 以上述べてきたところから、松下幸之助は、この“とらわれない素直な心”こそが、「経営を成功させる基本的な心のあり方」(「実践経営哲学」p.115)であり、「経営者が経営を進めていく上での心構えとして一番根本になるもの」だと断言する。(「実践経営哲学」p.110)この点を強調するため、松下幸之助は、この“素直な心になること”をその経営哲学の集大成とも言える「実践経営哲学」の最終章に置いたのである。

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