• 宮崎 勇気

4.5)“日に新た”(4)“日に新た”の実践を妨げるもの②


4.自然の理法に従う

 5)“日に新た”

 (4)“日に新た”の実践を妨げるもの ②

 経営者が経営環境の変化という事実自体を認識しない、あるいは、環境の変化を認識しつつも、それがもたらす経営への影響を“危機”と認識しない、あるいは、できない第二の理由は、“自分の感情”以外でも、私たち人間は、自分の過去の成功体験や過去に成功したビジネスモデル、「自分は常に正しい」と考える自分の物の考え方など様々なことにとらわれるからである。私たち人間は、何かにとらわれていると、その“とらわれていること”自体が自分にとって“重要なこと(価値観)”となり、あるいは、“正しいこと(信念)”となって、それらを軸として、物を見、物を考えるようになる。それらの“とらわれ”に意識がフォーカスされ、“固定”されてしまい、世の中の事象を認識したり、評価・解釈したりする際に“とらわれ”を軸として、“削除”“歪曲”“一般化”というメカニズムが無意識のレベルで働くのである。つまり、私たちは、自分の見たいものだけを選んで見て、考えたいものだけを考え(焦点化効果)、それ以外のものを認識の対象から“削除”してしまい、それらは“心理的盲点”となって、認識することができなくなってしまうのだ。それ故、経営環境の重大な変化という事実にも気づかないということが起こるのである。

 また、仮に環境の変化に気づいたとしても、その“とらわれていること”に都合のいいように“歪めて”認識し、評価・解釈するため、その環境の変化が経営に与える影響を“過小評価”し、“軽視”するのである。(“歪曲”)その結果、「今までのやり方でいいのだ」「それを変える必要はない」と自分勝手に都合よく決めつけてしまう(“一般化”)のである。

 以上述べてきた通り、“自分の利害や感情”などの“私心”や“過去の成功体験”“過去に成功したビジネスモデル”など様々なことにとらわれると、目の前に迫り来る“経営環境の変化”やそれが自社の経営に危機をもたらすことが認識・評価できず、松下幸之助の言う「固定渋滞」を生み出すのである。曰く、「現状にとらわれて創意工夫を怠り、進歩向上のない固定渋滞の姿が続いていくようになる」「現状をよしとして、改めるべきをも改めようとせず、いわゆる固定というか、停滞という状況のままに推移していくといった姿があらわれる」(「素直な心になるために」p.120)

 如何に経営環境が変わろうとも、少なくとも一度は成功し、またやり慣れたやり方やビジネスモデルをやり続けるのが、最も簡単であり、不安も少なく、力も発揮しやすい。それが、いわば、最も居心地のいい心の領域、コンフォートゾーンなのである。それ故、そこから出たくないし、出ようともしないのだ。これに対して、経営環境の変化がもたらす“経営の危機”という事態は、自分のこれまでやってきたやり方を否定するものであり、誰しも“見たくない”し、あるいは、見るとしても、“過去の成功したやり方”を否定することなく、それと整合的に見ようとするため、環境の変化のもたらす経営への影響を“軽視”する。その結果、“現状をよしい”と結論づけるのである。

 この点、仮にその“経営の危機”と“経営改革の必要性”に薄々気づいたとしても、これまでとは全くことなる新たなやり方を実行するということは、自分の居心地のいい“現状”から外に出ることとなって、居心地は悪く、緊張して力も発揮しにくいため、成功の見込みも見えず、失敗の恐れから、強力な力でコンフォートゾーンに引き戻されてしまう。その結果、“安定”を求めて、“現状をよしとする”ことを選択することとなるのである。しかし、そのような選択は、“固定渋滞”を招くだけでなく、経営環境が急激に変化しているような状況では、その変化に適応できず、“絶滅(破綻)”に至る恐れすらあるのである。変化に適応できないものは滅びることとなるというのが、“自然の摂理”だからである。

 このように経営者が目の前の“経営の危機”に気づかないでいるという事態について、松下幸之助は、次のように述べている。曰く、「危機がないのではない。危機を発見する努力を怠っているのだ。どのような組織にも危機は必ず忍び寄っている。」

Copyright © 2018 Yuki Miyazaki All rights reserved.

(お知らせ)関連の下記ブログも併せてご覧いただければ幸いです。

      現パナソニック株式会社の創業者である“松下幸之助の経営哲学”の現代の諸問題への応用として、最近の

      話題等をテーマにしたブログです。

      最新の記事は、「PHP研究所佐藤悌二郎氏の松下幸之助論に異論あり⑯4.衆知を集めること④」です。

#日に新た

  • Black Facebook Icon
  • Black Twitter Icon
  • Black Pinterest Icon
  • Black Flickr Icon
  • Black Instagram Icon

Copyright © 2016 Yuki Miyazaki  All rights reserved.

This site was designed with the
.com
website builder. Create your website today.
Start Now