• 宮崎 勇気

4.自然の理法に従う 5)“日に新た”⑫(6)“日に新た”の具体的な実践方法 ①


4.自然の理法に従う 5)“日に新た”⑫

(6)“日に新た”の具体的な実践方法 ①

 それでは、より具体的には、どのようにして“日に新た”を実践するのであろうか?

 第一に、「基本の経営理念を刻々変化する時代性に生かしていく」ことによって、“経営革新”を断行するのである。松下幸之助は、“経営革新”について「“革新”とは、基本の経営理念を刻々変化する時代性に生かしていくということである。」と述べている。つまり、松下幸之助の考える“革新”とは、“不易”を“流行”させるプロセスの中から生まれてくるもの、つまり、“不変の理念”を今の状況に当てはめて、“その理念が最大限実現された姿”は何かを徹底して追求し、考えて、考えて、考え抜く、そして、それを実行していく、その過程で、自らを省みて、その姿を実現するために足らざるものは何かを見出し、自らを変えて行くのだ。“不変の理念”、例えば、“お客様大事の心に徹する”との理念を今の時代の状況に当てはめて、顧客が何を求めているのか、顧客の真に求めるものを実現するためにはどうすればよいか、そのために“具体的に自分たちの何をどのように革新していくべきか”を考え、それを実行していくことが“革新”なのである。それが、“日に新た”を実践すること、即ち、環境の変化に適応するため、自己を革新することなのである。

 このようにして“日に新た”を実践している企業の成功事例は、いわゆる老舗企業の中に多く見出すことができる。日本には、世界と比較しても、100年以上続いているいわゆる“老舗企業”と言われる企業が多い。100年以上生き残っているには、それなりの理由がある。それは一言で言えば、“不易と流行”だ。ぶれない軸を持つ一方で、環境の変化に適応し続けてきているのである。その特徴は、その得意分野である“本業”と“自身の技術や強み”に拘り、それを守り続ける(“不易”)一方、その商品自体は時代の変化と顧客のニーズの変化に合わせて、あるいは、それを先取りして、自在に自らを変えて行っている(“流行”)という点にある。

 次の様な例がある。老舗企業“福田金属箔粉工業”は、自社の強みである“金箔の技術”を最近の携帯電話の折り曲げ部分に活かした。また、造り酒屋“勇心酒造株式会社”は、こうじ菌や酵母、乳酸菌などを用い、日本古来の醗酵技術を組み合わせて生み出したライスパワーエキスを使った入浴剤やアトピー性皮膚炎の薬、薬用美容液を開発し販売している。(「長寿企業は日本にあり」野村進著日本放送出版協会より)

 第二に、変化の予兆を敏感に把握して、俊敏に手を打っていくことである。松下幸之助は言う。「事業の経営は気宇を大きくし、しかも一面、神経質でなければならない。“大胆にして小心”でなければ真の仕事はできない。~大胆である反面、あたかもメーターの針のごとく、わずかの電流にも針がふれる程、神経質でなければならない。」「すべて事には“萌”がある。小さいことが大事に至る。この“萌”を敏感に把握して、善処していかなければならない。さらにいえば、匂いによって嗅ぎわけ得るほど鋭敏であってほしい。」(昭和20年1月松下電器経営方針発表会にて)

 変化には必ず“萌(予兆)”がある。ただ、その予兆を敏感に把握するためには、“何か”“とらわれ”ていては、いけない。その“何か”に自分の意識が“焦点化”して“固定”してしまい、その“何か”以外のことが意識から“削除”されて“萌(予兆)”に気づくことができないからである。それ故、“とらわれ”から解放され、中立的な(ニュートラルな)状態であることが不可欠である。それを可能にするのが、松下幸之助が“経営者の心構え”として最も大切だと強調する“とらわれない素直な心”であった。

 また、“萌(予兆)”に気づくためには、その前提として、“その変化”自体が将来ありうるということを認識していることが望ましい。それによって、自分の意識が“その変化”に“焦点化”する結果として、“その変化の萌(予兆)”を捉えることができるからである。あるいは、少なくとも“その変化”を無意識のレベルで“否定”せず、その変化の可能性に対しても“中立的であること”が必要だ。“その変化”を無意識のレベルで“否定”しているときには、“そのような変化は起こらないということ”に“とらわれ”ていることを意味するから、それ以外の情報、つまりそのような変化の“萌(予兆)”が存在しても、それとは気づかないからである。

 喩えて言えば、最近増えていると言われる“熟年離婚”の場合である。特に夫の方は突然妻から離婚を求められて困惑するということが多いようであるが、実は、それは突然ではなく、妻の方は、何度もそのシグナルを送っていたにも拘わらず、夫の方は、“熟年離婚”などということがまさか自分に降りかかるとは予想だにしていないため、その“萌(予兆)”、つまり妻からのメッセージに気づかなかったのだ。

 そこで、話を経営に戻すと、そのような経営環境の変化の“萌(予兆)”を的確に捉えるためには、自分が過去に成功した体験や成功したビジネスモデルなどの“何か”への“とらわれ”から脱却して、自分の意識を“中立(ニュートラル)”の状態にしておくことが不可欠である。そのためには、“とらわれない素直な心”が必要である。その上で、世の中にはあらゆる変化の可能性がありうることを前提として、常にそのような変化に関心を持ち、将来どのような変化がありうるかを考え続けることが重要である。

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      今年100周年を迎える現パナソニック株式会社の創業者である“松下幸之助の経営哲学”の現代の諸問題への       応用として、最近の話題等をテーマにしたブログです。最新の記事は、「憎まれっ子世に憚る⑥」です。

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