• 宮崎 勇気

4.自然の理法に基づく経営(4)“ものみな原因あり”:“成功の原因”をつくり、“失敗の原因”を無くして行く③


4.自然の理法に基づく経営

(4)“ものみな原因あり”:“成功の原因”をつくり、“失敗の原因”を無くして行く③

 他方、“ものみな原因あり”との考えから、“事業の失敗”にも原因があると松下幸之助は考えた。曰く、「事業は、正しい考え方・やり方でやれば、必ず成功するようにできている」と、“生成発展の原理”の下では、事業も成功することが原則だと考えた上で、「事業というのは、失敗しないのが本当で、失敗するのは、何かが間違っているためだ。失敗するには その原因が必ずある。原因をつくらない限り、成功の一途をたどる。」と考えたのである。さらに、その失敗の原因については、「事にあたって、行き詰まるということはない。行き詰まるということは、行き詰まるようなものの考え方をしているからである。」とする。

 この考え方によれば、事業は、正しい考え方・やり方でやれば、必ず成功するようにできているのであるから、失敗する場合には必ずその原因があり、それは自分自身の“考え方”や“やり方”が間違っていたからに他ならないということになる。つまり、失敗の原因は、常に100%自分自身がつくっているのだというのが、その論理的帰結となる。先に述べた「失敗の原因はわれにあり」との考え方である。

 私たちは、事業がうまく行かないときに、往々にして“経営環境の変化”や“他人”など自分の外に原因を求めがちである。「不況だからしかたがない」と自分を慰めて、環境自体が好転するのを待つか、「誰々が悪い」と他人を批判して、“被害者意識”に陥り、誰かが何とかしてくれるのを待つ、というように、受け身の姿勢に陥りがちである。しかし、そのような考えは、自ら自己イメージを傷つけ、自分を“環境や他人に翻弄される弱い自分”、松下幸之助の言葉で言えば「無力な将棋の駒」に貶めることとなり、その結果、それ以降もその自己イメージ通りに環境の変化の波に、また、他人の言動に翻弄され続けることとなるのである。

 これに対して、この松下幸之助の強調する“失敗の原因はわれにあり”という思考の枠組み(フレームワーク)を持つことによって、自分自身を振り返り(“自己反省”)、うまくいかない“原因”を外に求めるのではなく、“自分自身”の中に探す(“自己観照”)という正しい思考プロセスに導かれるのである。このように、“失敗”に直面して、大いに“反省”をし、そこから学び、自分の“考え方”や“やり方”を変えて行くことによって、次に同じ状況に遭遇した場合には、“成功”に繋げて行くことができる。文字通り、“失敗は成功の母”となる。

 経営の失敗の原因を他人や不況などの外に求めるか、自らの経営の考え方ややり方という内に求めるかの違いである。凡庸な経営者は、前者を採り、優れた経営者は、後者を採る。

 さらに「“失敗の原因はわれにあり”という考えに徹するならば、そうした(失敗の)原因を事前になくしていこうという配慮ができるようにもなる。」(「実践経営哲学」p.85)とし、さらに、「用意周到な計画を立てていくならば、失敗は絶無になる。」とも述べている。「事破れて悟る」のではなく、「先憂後楽」、失敗の原因を人々よりも先に予め考えて手を打ち、事前に無くしておく、それをも反映して事前の計画を用意周到に準備しておくことの重要性を強調する。ここに、失敗の原因、つまりリスクを事前に洗い出して(リスクアセスメント)、予めリスクへの対策を打って行くという現代のリスクマネジメントにつながる考え方がここに明確に示されている。

 このように、松下幸之助は、“生成発展の原理”という“自然の理法”の下、「事業は、正しい考え方・やり方でやれば、必ず成功するようにできている」という前提に立って、一旦将来の経営の目標を立てた上で、一方で“成功の原因”をつくり、確実に成功につなげていくための“必要条件”を作り出すとともに、他方で“失敗の原因”を予め無くしていくことによって、少なくとも“大きな失敗”を予め回避し、成功をより確実なものとする十分条件を満たそうとしたのである。これが松下幸之助の言う“成功の一途を辿る経営”であり、そこに現代の経営における“経営戦略”と“リスクマネジメント”という経営の両輪となる考え方を見出すことができるのである。

(お知らせ)関連のブログも併せてご覧いただければ幸いです。今年100周年を迎える現パナソニック株式会社の創       業者である“松下幸之助の経営哲学”の現代の諸問題への応用として、最近の話題等をテーマにしたブログで       す。

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#成功の原因をつくり失敗の原因を無くして行く

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