• 宮崎 勇気

松下幸之助の“選んだ”物の考え方(6)失敗の原因はわれにあり④


3.人間大事の経営 

3)松下幸之助の“選んだ”物の見方考え方

(6)失敗の原因はわれにあり ④

 ただ、そうだとしても、“環境”“環境の変化”の影響を受けることは避けがたいようにも思われる。例えば2008年のリーマンショックや2011年の東日本大震災のような経営環境の急激な変化は、人間の力の及ばないいわば“不可抗力”であって、企業としてはどうしようもないから、この考え方は当てはまらないようにも見える。

 しかし、そのような一見自分のコントロールの及ばない原因による場合であっても、受けた被害の大きさは、やはり企業によって違うのである。つまり、そのような中にあってもうまく対応した企業が必ず存在するのである。この点、松下幸之助は、次のように述べている。曰く、「現実に不景気の中でも利益をあげ、業績を伸ばしている企業があるということは、やはりやり方しだいだということではないだろうか。つまり、業績の良否の原因を、不況という外に求めるか、みずからの経営のやり方という内に求めるかである。」(「実践経営哲学」pp.57-58)

 他方、不景気によって大きな被害を受けた企業について、その原因を分析し、その上流に辿って行くと、不景気のみが唯一の原因ではなく、経営者たる自分自身の“考え方”や“やり方”にも原因があったこと、そして、それらが被害を拡大させたということがさらなる原因であったということがわかる。

 このように一見不可抗力の事態でどうしようもないように見えても、自分のコントロールの及ぶ範囲内にも必ず何らかの原因がある、そして、そこに辿り着くことができれば、それに手を打つことができる。つまり、一見不可抗力の事態のように見えても、やはり「失敗の原因はわれにあり」と言えるのである。

 この点、松下幸之助は、次のように述べている。不測の事態が発生したときに、それが突如として起こったように思うものであるが、「事が起こるには起こるだけの原因があるのであり、その原因に気づかぬままに時を過ごしたというにすぎない」(「続・道をひらく」p.158)そして、「人間、一面うかつなもので、みずからが刻々にその原因をつくり出していると何となく気づいていながらも、いざ事が起こってみないと、それが身にしみて省みられない。事の起こりはすべてわれにありである。」(「続・道をひらく」pp.158-159)不測の事態が発生する以前の段階において、実は、自ら「刻々に」“失敗の原因”を生み出しているというのである。

 また、松下幸之助は、失敗の原因をすべて“他人”のせいにすることも排除する。

 曰く、「人間というものは、他人の欠点は目につきやすい。往々にしてなにか問題がおこると、それはすべて他人のせいで、自分には関係がないことである、と考えがちである。しかし実際には、全く自分が無関係かというと、そうとはいえない場合も少なくないのが世の常ではないかと思う。・・・もしかりに人間を越えた、もっと高い観点から見たならば、他人のせいではあるけれども、実は自分のせいでもあるのだ、ということもあるのではなかろうか。・・・少なくとも、われわれ人間は、問題が起こった際には他人のせいだと考える前に、まず自分のせいではないか、ということを一度考え直してみることが非常に大切ではないかと思うのである。」(「決断の経営」p.128)

 特に経営者の場合には、その会社の意思決定について実質的な全権を有し、意思決定をすべきときにしないということも含めて、会社のあらゆる事業活動に関与しているわけであり、部下やビジネスパートナーなどの他人のせいにすることはできないと言うべきである。

 現代の神経言語プログラミング(NLP)の中には、“自分の立場”から離れて、視点を上げて、“第三者の立場”から客観的にその状況を見たり、さらには「人間を越えた、もっと高い観点」即ち、環境をも含めた全体を見渡す“メタポジション”に立って、双方の立場だけでなく、全体を見渡す広い視点から俯瞰するという“ポジション・チェンジ(知覚の位置)”という技術がある。3つの椅子を用意し、一つの椅子を第一の位置(自分の視点)とし、もう一つをその向かい側に置いて、第二の位置(相手の視点)とする。それら2つの椅子の双方が見える位置に3つ目の椅子を置いて、第3の位置(第三者の視点)とする。そして、順次第一の位置(自分の視点)、第二の位置(相手の視点)、第三の位置(第三者の視点)に座って、それぞれの視点から問題の事象を眺めてみる。すると、相手の気持ちがわかり、また、両者の関係性が客観的にわかる。さらに、それら全体を見渡せる第4の位置(メタポジション)に立って、全体をみて解決への戦略を考えるのである。松下幸之助は、このようなポジションを変えることを利用したリフレームの技術を自ら経験的に身につけており、それを実践していたのである。

「事破れて悟る」即ち、岩が山の上から落ちてきて頭にガツンと当たって初めて気づくということでは遅い。命を落としてしまっているからである。そこで、松下幸之助は、岩が頭にガツンと当たる前に、つまり、失敗する前にこの「失敗の原因はわれにあり」との考え方を適用すべきであるとする。

 曰く、「そのように、“失敗の原因はわれにあり”という考えに徹するならば、そうした原因を事前になくしていこうという配慮ができるようにもなる。だから、それだけ失敗も少なくなって、どういう状況下にあっても経営が順調にいくという姿になってくるわけである。」(「実践経営哲学」p.57)「およそ物事というものは、用意周到な計画をたてていったら、失敗はほとんどないといってもいいと思います。」(「経営のコツここなりと気づいた価値は百万両」p.71)失敗の原因は、“リスク”と考えることができるから、予めリスクを洗い出し、特定し、それへの対策を事前に講じておくという、“現代のリスクマネジメントの発想”を明確に示すものだと言えよう。

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