• 宮崎 勇気

6.補論1)失敗しない経営:松下幸之助とリスクマネジメント② 2)“先憂後楽”の発想①


6.補論1)失敗しない経営:松下幸之助とリスクマネジメント②

2)“先憂後楽”の発想①

 事業経営にはリスクがつきものです。これからやろうとする自分の事業に関して、目標を実現するために必要な施策を実施する一方、そのプロセスにおいて生じうるリスクについては、運命に委ね、起こったときに事後的に対応するのか、あるいはそれらのリスクに予め手を打ち、リスクを自らコントロールしていくのか、選べるとすれば、皆さんならどちらの道を選ぶでしょうか?

 左の道は、「事後の対応」つまり「出たとこ勝負」です。必要な施策は実行するものの、リスクについては、事前に色々考えて対応するということはせず、『自ら事前にリスクをコントロールすること』を放棄するわけです。その理由としては、事業を行うに際して、事前に様々な心配事を考えても切りがないし、すべてに対策を取ることは非現実的だ、また、それらの一つひとつが起こるかどうかもわからないのだから、事前の対応は当たり外れもあって非効率だ。それ故、事後の対応、即ち実際に問題が起こったときには、問題は明らかであり、リスクのように曖昧なものではないから、その問題に対して的確に対応していけば十分ではないか、その方がむしろ効率的だという考え方です。

 この考え方にも、“一理”あるように見えます。しかし、本当にそうでしょうか?

 確かに、問題自体、既に目の前に起こっているわけですから、“外れ”はなく、効率的であるようにも見えます。社会が今ほど複雑化しておらず、リスク自体も比較的少なかった高度経済成長時代には、妥当したとも言えましょう。当時は“作れば売れた”時代でしたから、兎に角作って売ることに経営資源を集中的に投入し、それを如何に効率的にやるかだけを考える、後は問題は起こったときに都度必要に応じて対応していくという考え方で、多くの日本企業はこの考え方を採り、それなりに機能してきたと言えましょう。

 しかし、その後社会が複雑化し、また、企業の活動がグローバル化してくると、企業を取り巻く経営環境(外部環境や内部環境)に潜むリスクも多様化し、しかも、それらのリスクが発現した際の企業経営に与える影響度も格段に大きくなってきました。政治経済社会リスクについて言えば、昨今の米中貿易戦争や中東のイランと米国の緊張関係、アジアでは、中国の覇権を狙った動き、北朝鮮の核開発問題等々があります。また、法令違反(コンプライアンス違反)について言えば、例えば、特許権や商標権、営業秘密(トレードシークレット)、意匠権などの知的財産権や模倣品問題、独占禁止法違反、不正競争防止法違反、贈賄防止法違反、代理店保護法違反、個人情報保護法違反、移転価格税制、PE(恒久的施設)や技術援助ロイヤルティと各国税法違反、PL(製造物責任)問題、安全保障輸出管理関連法令違反、RohdsやREACHなど環境保護関連法違反、児童労働禁止法違反、マネーロンダリング防止法違反、契約上のリスク等々です。企業の内部環境では、派遣社員の増加による企業へのロイヤルティと能力の低下とその悪影響もリスクとなります。

 これらの多様化し、かつ、影響度の拡大しつつあるリスクに対して、『事後の対応』にのみ依存し、事前に何らの対策を打たないと、リスクが発現したときには、あっという間に致命的なダメージを被ってしまい、企業としての存続も危うくなる場合すら生じてきます。そのような場合に、「事後対応のアプローチ」では、まずリスク発現の第一波をもろに受けてしまいます。そして、『事後対応の対策』では、後手に回って、適切かつ有効な対策とならない場合が多いのです。そもそも『事前の対策』を打っておけば、そのリスクの発現自体を防止できたかもしれません。また、防止できなくとも、リスクが発現した場合の被害を低減できたかもしれません。さらに、それらの対策は、事前だからこそ打てるというものもあり、その意味で『事後の対策』には限界があることを忘れてはなりません。

 このような意味で『事前の対策』と『事後の対策』とでは、決定的な差が生じる場合があるのです。『事前の対策』には、そのリスクの発現自体を予防又は発生の可能性を低減する対策とリスクが発生した場合の損害の大きさを低減するための対策があります。

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(お知らせ)関連のブログも併せてご覧いただければ幸いです。今年100周年を迎える現パナソニック株式会社の創業者       である“松下幸之助の経営哲学”の現代の諸問題への応用として、最近の話題等をテーマにしたブログです。

      最新の記事は、       「私たちは“仮想現実の世界”に生きている!5)人間の認知機能の歪み」②です。


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