• 宮崎 勇気

6.補論①失敗しない経営:松下幸之助とリスクマネジメント⑬5)「変化の萌しを敏感に把握して善処しなければならない」③


6.補論①失敗しない経営:松下幸之助とリスクマネジメント⑬

5)「変化の萌しを敏感に把握して善処しなければならない」③

 先に述べたように、松下幸之助は、『成功するには、それにふさわしい原因をつくる』こと、つまり“成功の原因”を見極めて、そこに経営資源と活動を集中する一方、事前に“失敗の原因”を無くして行くことによって、予め“用意周到な計画”を立てれば、失敗は無くなる、少なくとも“大きな失敗”はしないはずだと考えた。そして、この『成功の原因をつくること』『失敗の原因を無くしておくこと』の二つの側面から事業の計画を事前に徹底して検討し、用意周到に準備することの重要性を強調しました。

 しかしながら、他方では、松下幸之助は、「めくらさんはこけない」ということを言います。つまり、目の見える普通の人たちは、目が見えるが故に、前ばかりを見て足元をよく見ないから、足元の石に気づかず、転んでしまうことがある。しかし、目の見えない人は、目が見えないが故に、かえって足元を杖で確かめながら慎重に歩を進めて行くから、逆に転ぶことがないというのだ。

 曰く、「めくらさんは、普通あんまりころんでケガをしないそうです。しかし目の見える達者な人間は、ともすれば、ケガをしたり、ひっくり返ったりする。これはなぜかというと、めくらさんというものは、~その足元でもわからんから、~必ず杖をついてトントントントン・・・ニ尺ほど先を杖で確かめて歩く。そうするとケガもしないんですね。私は商売というものはそんなものだと思うのです。結局、お互いが、これはこうなるという、一応の目安をつけますが、実際はやってみないとわからない。だからめくらさんと同じようなやり方をすれば、私はケガせずして商売は伸びるものであれば伸びていく。」(「繁栄のための考え方」)

 一見矛盾するようなメッセージである。前者の考え方からは、成功の原因と失敗の原因を踏まえて用意周到な計画ができたのであれば、後はそれをやり抜くだけであって、変更する必要はないし、すべきではないようにも思われるからである。

 しかしながら、松下幸之助は、如何に用意周到に立てた計画でも、「実際にはやってみないとわからない」ものであり、また、実際の事業や商売の世界は何が起こるかわからないところもあるから、事前の計画は“一応の目安”に過ぎないと考えたのである。つまり、“自分が用意周到に立てた計画”というものにも“とらわれ”てはならないということである。

 「戦争論」で有名なクラウゼヴィッツが「戦争では当初の計画にはない、思わぬ出来事が次々に起こる」「一切が最初の目算を下回り、所定の目標のずっと手前にしか達しないことはざらだ」として“摩擦”という概念によって強調している点こそ、まさにこの計画と実際とのズレである。

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#失敗しない経営

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