• 宮崎 勇気

5.1)事業の目的・会社の存在意義 ⑥


5.社会とともにある経営 

1)事業の目的・会社の存在意義:“事業を通じて社会に貢献する”(「綱領」)⑥

 第五に、“儲けるために”事業をやって、とことん失敗を重ねて頭を打った結果、何かのきっかけで“世の為人の為に”事業を行うことが成功につながるということを身を以て知ることである。成功している経営者の中には、そうして失敗から学んだ人がいる。

 例えば、家具のニトリホールディングスの似鳥昭雄社長である。会社設立後、試行錯誤を重ねるも、いよいよ倒産かというときに、わらをもすがる思いで米国視察ツアーに参加し、「米国のような豊かな生活を日本で実現したい。そのための企業に育てよう。」という明確なビジョンが芽生えたという。そして、断食の修行を続けるうちに、色々な思いが頭を駆け巡り「これからはみんなのために生きるんだ。」と涙が止めどなく流れ、「仕事というものは、エゴやプライドによって相手の立場を忘れてしまうと失敗する。」という境地に達し、「顧客のために自分をゼロにする心づもりが芽生えた」と述べている。(日本経済新聞「私の履歴書」より)

 また、日本ポリグルの小田兼利会長もその一人である。「兎に角大儲けしたい」とだけ考えて、二十代で起業し、電子ロックや水をきれいにする浄化剤を開発し売り込むも、失敗の連続でなかなかうまく行かなかった。ところが、2002年のスマトラ沖地震では、この浄化剤が、電気がなくて使えずにほこりをかぶったヨーロッパの高価な浄水装置を尻目に、水不足を解決する救世主として大活躍した。さらに、2007年のバングラデシュのサイクロン被害でも、村長から直接取引を要請された。こうして、水ビジネスは、途上国の人々を救う水ビジネスとして花開いたのである。小田氏は、現地の素朴な人々に会う度に、また、きれいな水を飲んで喜んでいる子供たちの笑顔に感動するうちに、“儲けるため”から“安全な水の飲めない人々にきれいな水を届ける”ことへと“事業の目的”が変わって行ったという。

 第六に、先に物が行き渡った現代社会と述べたが、視点を世界に広げてみれば、貧困の問題は、未だ解決されてはいない。世界で1日2ドル以下で暮らす貧困層は、30億人存在すると言われている。また、米国における貧困人口は、4357万人で、貧困率は、14.3%とされる。(C・オットーシャーマー MIT上級講師 「U理論」より)そのような世界の貧困の現状を知り、貧困問題の解決に取り組む団体に参加してみるなどの体験を通して、貧困をなくすための解決を事業として考えることもできるであろう。

 最近では、“社会に貢献する”ということを経営理念として掲げる会社は多い。つまり誰もが同じようなことを一応は考えているのだ。しかし、そのような会社のすべてが経営に成功しているわけではない。この点について、松下幸之助は、次のように述べている。「しかし、大切なのは、それにどれだけ徹しているかということではないだろうか。その徹し方によって、その会社の経営の実態というものにも差が出てくるような気がする。」(「思うまま」p.181)

つまり、まず経営者自身が“社会に貢献する”ことを“強く願う”ことを通して、“自分の強固な信念”とし、自ら先頭に立って“使命感”“熱意”を以ってそれを実践すること、そうすれば、そのような経営者の考え方と熱意に多くの社員が心から納得し、共感して、それを信念として共有するようになる。そうすると、社員が日々のあらゆる業務において、実際にその考え方を徹底し、それを最も重要な拠り所として判断し行動するようになる。そのような“社会に貢献する”という考え方を社員の皆が心から共有し、その考えや行動に現れてくれば、事業の成功という結果は自然と出てくるものだというのである。

これに対して、“社会貢献”が単なる“建前”で“外向けの飾り物”として掲げているだけの会社は、先にも述べた通り、大きな事業の成功はおぼつかない。そのような会社では、日常の事業活動は、その建前とは真逆の売上や利益を最重視する価値観によって行われている場合が多く、仮にそれを方針としていても、多くの社員は、心から納得しておらず、また、日常の業務の判断基準とまではなっていないことが多い。そのような会社では、事業活動のベクトルが定まらず、動きがバラバラになり、事業は成功しない。

松下幸之助が言う通り「どこまで徹底するか」という日々の経営活動や事業活動における“実践”、そして、さらに遡れば、本気でそう思っているか、自身の“強固な信念”となっているかどうかということこそが正に問題の核心なのである。

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#事業の目的と企業の存在意義

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