• 宮崎 勇気

5.1)事業の目的・会社の存在意義 ⑤


5.社会とともにある経営 

1)事業の目的・会社の存在意義:“事業を通じて社会に貢献する”(「綱領」)⑤

 第三の解決法は、“己を知る”ことである。物と情報が溢れ、何不自由なく生きられるこの現代社会において、自分自身について十分に知らないまま、ただ漫然と生きていて、自分の人生の目的に気がつかない、あるいは、見つけられないという人が多い。しかし、自分自身と真に向き合い、「自分は何者なのか?」「自分は何のために生まれてきたのか?」という根源的な問いを自らにぶつけることによって、自分自身が本当に心からやりたいことがわかる。人間は、社会的動物であり、元々“社会や人々の役に立つこと”をすることに喜びを持つという利他的な性質があるからだ。ところが、自分の“殻”の中に閉じ籠り、自己中心的な考えにとらわれ、自分の利害や感情にとらわれている限り、分厚いコートを着込んでいるが如く隠れて、それに気がつかないのである。

 そして、自分が何者で、何のために生まれてきたのか、自分の使命・目的は何かということについて、明確な答えを自分なりに見出し、それを潜在意識のレベルで“信念”として持てるようになったときに、それと企業の経営理念とを“照合”してみる。そして、両者が根本的なところで一致することが確認できたとき、そこで初めて心から会社の使命や経営理念を自分自身の“信念”として共有することができるのである。また、顕在意識と潜在意識の向かう方向が合致することによって、強烈なコミットメントが生じ、その溢れんばかりの意欲と内発的動機が生まれて、脳が活性化し、ドーパミンが分泌されて、“火事場の馬鹿力”と言われるような普段の実力以上の潜在能力を発揮することができるようになるのである。  また、第四の解決法は、先に述べた松下幸之助の提案する“見方を変える”ことによって、その仕事の“意義”を再発見することである。アイスクリームをつくる機械の販売をしている人を例に挙げて、仕事がいやになると、自分の商売に身が入らなくなり、成績も上がらない。それでなおさらいやになって、悪循環に陥る。このような悪循環を断つために、松下幸之助は、「自分の仕事の意義を正しく認識すること」が肝心だと言う。

 「このアイスクリームをつくる機械の場合でも、家庭に喜びをもたらす仕事だという見方もできる。そういう見方をすれば、これは有意義な仕事だから、大いに張り切って力強く仕事を進めていかなければならない、という気持ちにもなってくる。それが人間というものである。」「心の底から、このアイスクリームの機械を売ることは、各家庭に喜びを広げていく活動であると信じたならば、おのずとその販売の仕方も変わってくる。力強いものとなる。したがって、成績も上がってくる。仕事がおもしろくなってくる。すると、さらに成績も上がって・・・悪循環は変じて良循環となる。」(「人を活かす経営」pp.218-219)

 こうして“アイスクリームの機械を売る”仕事の社会的な意義を“信念”とすることに成功すれば、それは“意欲”と“エネルギー”を生み出し、仕事が面白くなる。また、意識のフォーカスする先が、自分の中の不満から、“各家庭に喜びを広げていくために自分には何ができるか”という点に移行することにより、“焦点化効果”から必要な情報が集まり、ヒントにも気づき、それまで思いもつかなかった知恵と工夫が思い浮かぶようになる。そして、機械が売れて、顧客の喜びの声を聞くとさらに意欲が湧いてくるというような好循環となっていくというわけである。

 このように“自分の仕事の意義”について、“心の持ち方”を変えることで、これだけの大きな効果を生むのであり、しかも、人間は自分の仕事の意義としてどれを選ぶのかを“選択する”ことができるというのである。

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#事業の目的と企業の存在意義

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