• 宮崎 勇気

5. 3)経営環境の変化の“萌し”を敏感に感じ、善処していく ⑤


5.社会とともにある経営

3)経営環境の変化の“萌し”を敏感に感じ、善処していく ⑤

 このように、“失敗”の概念を捉え直し、“失敗してもかまわない”“失敗は学ぶことである”、そして“挑戦すること”をよしとする企業風土に改革していくことが、特に大企業においては重要であろう。

 あるいは、本社や本業での急激な改革が困難であるというならば、別会社を興して、グループ内ベンチャー企業として新規事業を起こしていくという仕組みを別に作り、そこに“失敗を恐れない”“失敗から学ぶ”“失敗は成功へのプロセスである”と考える企業文化を醸成するということも考えられよう。

 特に『顧客のニーズ』を予め特定することが極めて難しいという市場において、『顧客の真に求めるもの』は何かということは、やはり顧客に聞くのが一番である。それを“顧客の声”を聞こうともせず、自分たちの立ち位置から自分たちの価値観で推し量って(“歪曲”)、“顧客の求めるもの”を一方的に決めつける(“一般化”)から失敗するのだ。過去に成功した商品があると、それを“改良”すれば売れるはずだと自分勝手な理由づけをして、成功した商品の焼き直しを繰り返すだけでは、顧客のニーズの変化に適応することはできない。“顧客の声”を聞くプロセスを前提とした“試行錯誤”を肯定し、それをやりやすい“風土”と“仕組み”を作ることが極めて重要である。

 それは、“お客様大事の心に徹する”という不易の理念を徹底し、お客様のニーズを把握するやり方を現代の時代の状況に合わせて変えていくこと(“流行”させる)であり、松下幸之助のいう“革新”に他ならない。

 事業の経営というものが、単純化した“経営戦略のモデル”を経営に当てはめて行けばうまく行くというものであれば、結構なことであるが、現実の経営はそう単純ではない。上に述べた経営戦略100年の論争の歴史の末に“超・試行錯誤型経営”が登場したということがそれを物語っている。

 この点、松下幸之助は次のように述べ、「経営は創造である」と主張する。

 曰く、「経営というものは、絶えず変化している。経営をとりまく社会情勢、経済情勢は時々刻々にうつり変わっていく。その変化に即応し、それに一歩先んじて次々と手を打っていくことが必要なわけである。だから・・・いわば経営には完成ということがないのであって、絶えず生成発展していくものであり、その過程自体が一つの芸術作品だともいえよう。そういう意味において、経営は生きた総合芸術であるともいえる。」(「実践経営哲学」p.96)

 松下幸之助の経営哲学は、普遍的かつ不変のものであるが、それをその時代や世界・地域・国の状況に適合させつつ実践して行くためには、“無限の方法”がありうる。それ故、「経営は創造である」とともに、「一つの芸術作品」なのである。

 そのような芸術作品を作り上げるのは、それぞれの経営者自身である。松下幸之助の提示する経営者としてのあるべき“心の持ち方”のフレームワークを基礎として、経営者自身の行う事業の特徴や自社の強み・弱み、その政治・経済・社会的な経営環境並びに同業他社の状況等を踏まえて、中長期の目指すべき経営の姿や事業計画、個々の経営判断をして行くわけであるが、そこには、経営者自身の個性とともに、知恵と工夫を働かせる余地は“無限”にあるのだ。百花繚乱しうるものなのである。しかし、その一方で、それらの共通項を辿って行けば、結局、松下幸之助の提唱する経営哲学に行きつくというわけである。

Copyright © 2018 Yuki Miyazaki All rights reserved.

(お知らせ)関連のブログも併せてご覧いただければ幸いです。今年100周年を迎える現パナソニック株式会社の創業者       である“松下幸之助の経営哲学”の現代の諸問題への応用として、最近の話題等をテーマにしたブログです。

      最新の記事は、

「私たちは“仮想現実の世界”に生きている!5)歴史の書き換え:勝者が歴史をつくる31」です。

#変化の萌しを感じ善処していく

最新記事

すべて表示

5.3)経営環境の変化の“萌し”を敏感に感じ、善処していく ④

松下幸之助は言います。「百の事を行って、一つだけ成ったとしたら、大抵の人は事の成らない九十九に自信を無くし、もう再びその事を試みなくなるでしょうな。そうなれば、まさに失敗ですわ。しかし、よく考えれば百が百とも失敗したわけではない。たとえ一つでも事が成っているということは、他の九十

5.3)経営環境の変化の“萌し”を敏感に感じ、善処していく ②

松下幸之助は言います。『人生も仕事も心の持ち方次第』「大胆にして小心であれ」「事業の経営は気宇を大きくし、しかも一面、神経質でなければならない。“大胆にして小心”でなければ真の仕事はできない。~大胆である反面、あたかもメーターの針の如く、わずかの電流にも針がふれる程、神経質でなけ

  • Black Facebook Icon
  • Black Twitter Icon
  • Black Pinterest Icon
  • Black Flickr Icon
  • Black Instagram Icon

Copyright © 2016 Yuki Miyazaki  All rights reserved.

This site was designed with the
.com
website builder. Create your website today.
Start Now