• 宮崎 勇気

5.3)経営環境の変化の“萌し”を敏感に感じ、善処していく ④


5.社会とともにある経営

3)経営環境の変化の“萌し”を敏感に感じ、善処していく ④

 先に、大企業は、自ら変わることが難しいと述べた。過去に成功した商品があればあるほど、“失敗”を恐れ、“失敗”を許さない風土、減点主義の人事評価制度ができてしまうからである。そうなると、思い切った革新的な製品の開発に“挑戦する”ことは難しい。(“イノベーションのジレンマ”)失敗すれば致命的だからである。

 それでは、大企業が失敗を恐れずイノベーションを続けて行くためには、どうすればよいか?

 そのためには、経営者自身が“失敗”というものを捉え直し、その“定義”を否定的なものから肯定的積極的なものに変えること、そして、企業文化をそのように変えることである。しかし、『言うは易し、行うは難し』である。

 失敗すれば、人は落胆し、意気消沈するものである。しかし、松下幸之助は、この点について次のように考えた。「百の事を行って、一つだけ成ったとしたら、大抵の人は事の成らない九十九に自信を無くし、もう再びその事を試みなくなるでしょうな。そうなれば、まさに失敗ですわ。しかし、よく考えれば百が百とも失敗したわけではない。たとえ一つでも事が成っているということは、他の九十九にも成る可能性があるということですね。そう考えれば勇気が出てきましょう。そして、事の成った一つを等閑にしないで、それを貴重な足がかりに、自信を持って九十九に挑むことができる。そうなれば、もはや成功したのと同然ですよ。よい面を見て自信を持つか悪い面を見て自信を無くすか、それによって人生は大きく変わってくるのではないでしょうか。」これは、世の中には常に陰と陽とがあるが、そのどちらに自分の意識をフォーカスするのかという点について、“より明るい物の見方を選ぶ”ということである。

 さらに、松下幸之助は、“失敗”自体に内在する“積極的な側面”を引き出して次のように解釈する。即ち、自分の父親が米相場で失敗したことにより、丁稚奉公に出ることとなり、それが今日の自分につながっているということから翻って考えて、“失敗”ということについて、次のように述べている。「そうすると父の失敗は、私にとっては失敗ではなく成功への道であったことになる。そう考えれば、人生において100%の不幸や失敗というものは存在しない。どんな不幸や失敗も、50%は幸福や成功の要素を含んでいると考えられる。」人生はすべて“塞翁が馬”である。人生に起こる如何なる事象も、その時々の状況によって、それが持つ意味も変わるのである。失敗か、成功か、ということも、後から見れば、その意味も変わりうるのだ。

 そして、“失敗に学ぶ”ためには、失敗の原因というものについて、「運が悪かった」と考えるのではなく、「失敗の原因はわれにあり」と考えるべきだと、松下幸之助は強調した。曰く、「うまくいかなかったときに、それを運のせいにすると、その失敗の経験が生きてこない。自分のやり方に過ちがあったと考えれば、そこにいろいろと反省もできて、同じ過ちは繰り返さなくなり、文字通り“失敗は成功の母”ということになってくる。」(「実践経営哲学」56p)「何らかの失敗があって、困難な事態に陥ったときに、心を開いてそれを素直に自分の失敗と認めていくかどうかということが一番の問題です。それを認めないということでは、失敗が百ぺんあっても少しも進歩しません。不満をかこつだけで、さらに失敗を繰り返すことになってしまうでしょう。」

 さらに進んで、松下幸之助は、“失敗”というものは、途中で止めるから“失敗”なのであって、その“失敗”から学んで、成功するまでやり続ければ、必ず成功するものだとして、経営者たる者は、『必ず成功すると考える』こと、『成功するまで諦めない』ことが大切であると強調するのです。曰く、「何事によらず、志を立てて事を始めたら、少々うまくいかないとか、失敗したというようなことで簡単に諦めてしまってはいけないと思う。一度や二度の失敗で挫けたり諦めるというような心弱いことでは、本当に物事を成し遂げていくことはできない。」

 そして、“失敗を恐れる風土”に対しては、松下幸之助は、「世に言う失敗の多くは、成功するまでに諦めてしまうところに原因があるように思われる。~一度大義名分を立て、志を持ってことにあたる以上、指導者は、1%でも可能性が残っている限り、最後の最後まで諦めてはいけないと思う。」と警鐘を鳴らす。目の前の仕事を“とらわれない素直な心”で本当に“真剣に”やっていれば、『人間社会の発展の原動力となる』ような“為すべきこと”が見えてくる、そして、経営者たる者は、リーダーとしてその“志”は『必ず成功する』ものだと心から信じなければならない、そうして“信念”と化した“志”は、心の中に新たな回路を形成し、自動的にそれに沿って物事を考え、行動するようになる、また、途中で“失敗”しても、軌道修正して最終目標に向かって行く。そうなれば、自然と『成功するまで諦めない』状態となり、“失敗を恐れる”ことはなくなるのである。

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