• 宮崎 勇気

4)人を使いこなす(3)“人間への愛”にもとづく経営①


4)人を使いこなす

(3)“人間への愛”にもとづく経営 ①

 人間の行動は、突き詰めれば、“愛”と“恐れ”のいずれかから生じていると言われる。

そのどちらから行動が生じているかを決めるのは、意識レベルであるとする研究結果がある。

 人間行動を研究する米国の精神科医デビッド・R・ホーキンス氏は、意識レベルを17段階に分類し(悟り、平和、喜び、愛、理性、受容、意欲、中立、勇気、プライド、怒り、欲望、恐怖、深い悲しみ、無感動、罪悪感、恥)、人間の行動は、“理性に基づく決意”によると考えることは“幻想”に過ぎず、実際には過去に繰り返されてきた“行動パターン”に支配されており、それを選択するのは“意識”であるとする。先に述べた「社員たちの心の持ち方」は、ここで言う“意識レベルの問題”と捉えることもできる。

 松下幸之助の言う自分の利害や感情などの私心にとらわれた状態は、先の17段階の中の“怒り”“欲望”“恐怖”“無感動”などの意識レベルの低い状態と一致し、「社会の発展の原動力となる」との経営理念が信念となった状態は、“平和”“愛”“喜び”“受容”など意識レベルの高い状態と一致すると言える。

 企業について言えば、その組織全体の意識レベルが高いか低いかによって、“愛に基づくパワー”が支配する行動を採るか、それとも“恐れに基づくフォース(“力”)”に支配された行動を採るかが決まってくるとホーキンス氏は言う。例えば、意識レベルの高い企業においては、“顧客に対する思いやり”があり、例えば、ウォルマートのように顧客が足を休ませながらショッピングもできるスペースを作るが、意識レベルの低い企業では、一平方フィート当たりの売上を管理し、“効率”を追求するから、そのようなスペースは“無駄”と考える。

 また、意識レベルの高い企業は、“従業員に対するサポート”がしっかりしており、従業員は客に対して心から笑顔でいられるし、転職率も低く、その家族も会社を支持する。意識レベルの低い企業では、従業員に対して“非人間的な扱い”をし、従業員からは笑顔が消えて、顧客へのサービスは悪くなり、転職率は高く、それ故、常に不足している。

 さらに、問題解決のアプローチについても、意識レベルの低い企業では、問題の“原因”と思われるものを攻撃する。そうなると、“犯人探し”になりがちで、その当事者は、責任追及から逃れるために、真の原因や証拠を隠そうとする。これに対して、“意識レベル”の高い企業では、“解決”に“焦点”を当てて解決をサポートしようとする。ここでは、“犯人探し”は起こらず、本当に必要な問題の“解決”に皆の意識がフォーカスされるからだ。

 この説によれば、如何に素晴らしい経営戦略を経営者が採っても、社員たちの“意識レベル”が低ければ、社員たちは、その戦略の通りには行動しないか、あるいは、した振りをするだけで、期待される成果は上がらないということとなる。社員を“使い捨て”にするような、いわゆるブラック企業は、その例である。

 これに対して、社員の意識レベルが高い企業では、経営者が戦略を語らなくとも、社員たちが自律的に顧客の方を向いて“顧客のために良いこと”を考え、行動するし、社員同士がお互いに足りないところを“補い合”って“一致協力”して事にあたるから、自ずと成果が上がるということとなる。この点、例えば、東京ディズニーリゾートは、その9割を占める1万9000人のアルバイトに支えられており、アトラクションやイベントもさることながら、彼らの機転の効いたサービスが顧客の感動を呼び、顧客の高いリピート率を維持していると言っても過言ではない。彼らは、キャスト(役者)と呼ばれ、“目の前の客を喜ばせる”という“役”を演じ切ることを求められているだけで、細かいマニュアルがあるわけではない。後は、夫々のキャストが、その場その場で顧客の状況を踏まえて、どうすれば顧客が喜ぶかを自ら考えて行動している。“人を喜ばせること”自体が彼らの喜びとなっているのだ。このようなマニュアルを遥かに超える高いレベルの行動は、組織全体の高い意識レベルのなせる技であると言えよう。

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#人間への愛にもとづく経営

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