• 宮崎 勇気

5)組織の力(5)“目に見えない要因”に対処する⑤


5)組織の力を最大限に発揮させる

(5)“目に見えない要因”に対処する⑤

 このような「社員の人たちの心構えとかやる気、心持ち」に大きな影響を及ぼすものとして、松下幸之助は「従業員の人びとに対する経営者の気持ち、心根というもの」を挙げている。

 曰く、「小規模の会社の経営者であれば、みずから率先垂範して、そして部下の人に「ああせい、こうせい」と命令しつつみんなをつかって、大体成果をあげることができるでしょう。しかし、これが百人、千人となれば、そういう姿必ずしも好ましくないと思うのです。・・・形、表現はどうありましょうとも、心の根底においては、「こうしてください、ああしてください」というような心持ちがなければいけないと思うのです。・・・これがさらに、一万、二万人になれば、・・・「どうぞたのみます、願います」という心持ち、心根に立つ、そしてさらに大をなして五万人十万人となると、これはもう「手を合わせて拝む」という心根がなければ、とても部下を生かしつつ、よりよく働いてもらうことはできないと思うのです。そのような心根を持っているならば、同じ言動であってもその言動のひびきは違ったものになりますから、部下の人びとは、そのひびきをくみとって多少無理と思われるような命令であってもそれぞれに得心して働いてもらうことができるのではないかと思います。だから、そういう心根がなかったならば、いくら命令を出しても、部下はその命令に感ずるところ少なく、従って働きもにぶくなって大きな成果も得られない、ということになってしまいます。」(「商売心得帖」pp.92-93)

 経営者の言葉が、従業員の心に響くかどうかは、“経営者の従業員に対する心根”次第だと言うのである。経営者の言葉を下から聞いている従業員の人情の機微を実によく捉えた言葉である。経営方針を発表すれば後は社員たちがそれを実行するのが当然と“誤解”している経営者は、大いに反省しなければならない。経営者が、そのような“心根”しか持たない場合は、それが社員たちに伝わり、社員たちは、表面上は方針に従っているように見えても、見えないところでは、手を抜いたり、自分の信じる反対のことをやっていたりする。いわゆる“面従腹背”という現象が起こるのである。これでは、組織の目的は達せられない。

 また、松下幸之助は、社員たちを「よしやろう!」という気分にさせるために、さらに、それを超えて“その潜在能力を発揮させる”ために有効ないくつかの“心の持ち方”を提示している。

 それは、まず第一に「主体的に生きる」という考え方であり、そこから生まれる“責任者の意識”である。それが“依存性”と“被害者意識”という人間の心の弱さに打ち克つ力を生む。

 第二に“使命感”であり、そこから生まれる“情熱”である。それは、また“利他的な”人間の本質を覚醒させ、その結果についてだけでなく、そのプロセスにおいても、脳が喜び、ワクワクしながら、脳が活性化し、創造力と潜在能力が発揮されるのであ。(プライミング効果)また、“情熱”は、“意欲”と“エネルギー”、さらには“常識を打ち破る力”を生む。

 第三に“社会の公器としての責任感”であり、そこから生まれる人間の弱さに打ち克つ“厳しさ”である。例えば、品質が悪いと言われながら、ズルズルと同じ活動を続けることなく、直ちに改革のメスを入れようとの“決意”を生み出すものこそ、この“社会に対する責任感”である。

 第四に、“経営者の意識”を持たせる“社員稼業”の考え方である。

 そして、第五に“愉快に働く”ことである。いずれも、人間の脳を活性化し、潜在能力を発揮させる。

 松下幸之助は、経営について、“目に見える要因”だけでなく、“目に見えない要因”も合わせて考えて取り組むことが重要だということを金魚鉢の金魚に喩えて次のように述べている。「早い話が金魚な。あれを飼うのに金魚そのものを考えるだけではあかんわね。水を考えんとね。金魚ばかり考えて、水を軽視したら、金魚、すぐ死んでしまうがな。」(「経営秘話」江口克彦著p.99)それでは、それらの“目に見えない要因”をどのようにして見るのか?この点について、松下幸之助は、次のように述べている。曰く、「まずは肉眼で見えるものを見て、会得する。次に肉眼では見えないもの、精神的なものを見る。その見えないものを見るのが、心眼である。心で見ると。そこまでいかんと具合悪いな。心眼で見えるようにならんことには、本物にはならない。肉眼で見てるあいだはな。」(1981年3月26日)

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#目に見えない要因に対処する

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