• 宮崎 勇気

5)組織の力(5)“目に見えない要因”に対処する①


5)組織の力を最大限に発揮させる

(5)“目に見えない要因”に対処する①

 私たちは、目に見えるものや耳で聞こえるものなど、“五感”で知覚することのできるものを信用しやすく、“関心”もそこに集中しやすい。逆に言えば、五感で知覚することのできないものは、その存在すら信じられず、ましてやそれが大切だとは思えないのである。松下幸之助は、この点を指摘し、次のように述べている。「自分の目で見、自分の手でたしかめる――これほどたしかなことはないけれど、ともすればお互いに、自分の目のとどく範囲、手にふれる範囲のたしかさにとらわれて、これがすべてなり、これがまさに“世界”なりと速断しがちである。」(「続道をひらく」p.162)

 ここで、松下幸之助は、自分の目のとどかない範囲というものが存在すること、そして、その部分を常に忘れてはならないと指摘するのだ。例えば、人間が集まって活動をする場合、“計画”通りに行かないことが多い。なぜなら、計画を実行するのは、“人”であり、その実行のプロセスにおいて、“人にまつわる様々な問題”が必ず生じ、それらが計画遂行の“障害”となるからである。“事業経営”も例外ではない。経営の様々のプロセスにおいても、やはり目に見えない“人間関係上の問題”があちこちで発生し、それらが相互に影響し合いながら、方針や計画は実行されていくのである。

 松下幸之助は、この経営における“人の問題”に着目し、次のように述べている。曰く、「目で見、手でたしかめるたしかさにはまちがいがない。しかし、自分の目のとどかないところ、手にふれえないところにも、さまざまの人がいてさまざまの考えを持ち、さまざまのものがあって、さまざまの働きをしている。これもまたまちがいのない“世界”なのである。」(「続道をひらく」pp.162-163)実際、“最新の経営戦略”を採用しても、事前に期待されていたほどの効果が出ないという経験を多くの企業が繰り返している。それは、その経営者が、最新の経営戦略を形だけ導入し、企業組織内の“目に見えない部分”を“経営の問題”と認識していないからだ。その結果、その“見えない部分”を“放置”し、マネジメントしなかったからに他ならない。

 この点、松下幸之助は、経営者の“心の持ち方”として次のように述べる。「お互いに今すこし謙虚でありたい。すくなくとも、自分の目と手のワクを越えた“世界”に対して、謙虚に耳を傾け、これを吸収する柔軟な心を持ちたい。これがすなわち自分をひらくことで、同時にまた人をひらき、国をひらき、世界をひらく道にも通じてくるのである。」(「続道をひらく」p.163)“目に見えない部分”に気づかないとか、それを“無視”(“削除”)又は“軽視”(“歪曲”)するのも、“五感によって感知できるものへのとらわれ”の結果であるとも言える。そこから抜け出すためには、“素直な心”から生まれる“謙虚さ”を以って、“自分の目と手のワクを越えた世界”に“自分(の心)をひらく”ことが必要だと言うのである。

 その上で、松下幸之助は、「経営をすすめるときに考えておかんといかんことはな、目に見える要因と、目に見えない要因を、両方とも考えんといかんということやね。~経営を改善して行こうとすると、大抵の経営者は、この目に見える要因に心を奪われ、それらを変えようとして、社内を動かし、社員に努力するように指示を与える。しかし、実際には、それでは無理や。そういうことだけでは、経営というものは決してよくはならない。そういうものも極めて重要やけど、もうひとつ、目に見えん要因というか、条件というものも合わせて考えんといかん。」と述べ、経営における“目に見えない要因”の大切さを強調するのである。ここで「目に見える要因」とは、「技術や商品、組織・体制」を意味する。

 それでは、ここで言う「目に見えない要因」とは何であろうか?

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#目に見えない要因に対処する

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