• 宮崎 勇気

6)パートナーの力を最大限に発揮させる(1)共存共栄③


6)パートナーの力を最大限に発揮させる

(1) 共存共栄 ③

 さらに重要な点は、この“共存共栄”という考え方の中には、共存共栄という“結果”を目指すだけでなく、それを実現するための“思考プロセス”がそこに含まれている点である。即ち、“共存共栄”を実現するためには、“自分の利害”だけでなく、“相手方の利害”も見えていることが前提であり、さらにその上で“両者とその周りを含めた全体を客観的に眺めることのできる立場(メタポジションという)”に立って、より高い視点と広い視野から、両者を共に包み込んだ全体を見て、両者が共に利益を享受して“存在”し続け、かつ、共に“繁栄する”ことのできるような解決策を見出そうとするいわば“弁証法的な思考プロセス”に導くところにその実践的な意義があるものと考える。

 それは、“私心”にとらわれて、“私の都合”で事業を行う者には、認識から“削除”され、“盲点(スコトーマ)”となって決して見えない領域であり、“私の立場”を離れて全体を見渡せるメタポジションに立ったときに初めて見えてくるものである。

 例えば、事業経営を行う際に、取引先との間で、あるいは、自社内の組織間で、様々な問題が生じたときに、時に互の主張が平行線を辿り、交わることがなく、解決不能とも思われる場合がある。一つのパイを取り合って、お互いの利害がぶつかり合っているときに、双方が自分の主張に拘る限り、“勝つか負けるか”の争い、即ち“ゼロサムゲーム”となり、いずれかが“譲歩”しない限り、問題は解決しない。こちらが利益を確保するということは、相手方が利益を失うことを意味する、と思い込む。そうして双方とも“自分が勝つか負けるか”の二者択一となって、互いに引くに引けず平行線となるのだ。

 これは、双方ともがお互いに“自分の立ち位置”から“自分の利益”だけに意識をフォーカスして、その自分の利益を獲得しようとしているからである。双方ともに、自分の立場から自分の見たいもの(自分に都合のよい事実や自分の利益)だけを自分の見たいように“歪曲”して見て、自分の都合のいいように“決めつけて”いる(“一般化”)からである。真の解決につながる重要な情報が見えない、あるいは、見えても無視、軽視してしまうのである。

 この点、松下幸之助は、次のように述べている。曰く、「自分が困るから、それであれこれと思案して、自分が困らないようにあれこれと対処もするのだが、自分が困るというただそれだけで、いくら案じ、いくら対処してみても、しょせん道はひらけない。策は生まれない。」利害が対立したときに、自分を押し通すか、又は、譲歩するかという二者択一の思考方法では、視野に限界があり、解決策は見えてこないことを強調する。

 では、どうすればよいか。

 この点、アルバート・アインシュタインは、「どんな問題も、それを創り出したのと同じレベルの意識では解決することはできない。」と述べている。そこで、自分の立ち位置と視点を変えることが鍵となる。

 松下幸之助は、次のように述べる。「自分が困るときは実は他人も困ることが多いので、だからせめては自分だけの対処の道を考えるのでなくて、自分も他人もあわせて困らないように、あわせてうまくいくように、そんな思案をめぐらして、そんな対処の策を求めてみる。・・・案外、道がひらけてくる。」

 “相手の繁栄”をも目的の中に“包み込む”“共存共栄”という考え方を採ることによって、“自分自身や自社の立場”から抜け出して、“視点”が上がり、“視野”が拡がって、より客観的に“自分の立場”だけでなく、“相手の立場”、さらには“市場の全体”を客観的に認識することができるようになるだけでなく、それまで“盲点”となって見えなかった部分、即ち、“自分の利害と相手の利害の双方が両立しうる解決策”をも見出すことができるようになるのである。即ち、“一方が勝ち他方が負ける”という“二者択一の解決策”ではなく、双方の主張をいわば“包み込み”、“双方に利益となるような第三の解決策”を見出そうと考え始めるのだ。

 それは弁証法的思考方法と言える。弁証法とは、“対立を克服する思考方法”であり、概ね次のような考え方である。

 全てのものは己のうちに“矛盾”を含んでおり、それによって必然的に己と対立するものを生み出す。生み出したものと生み出されたものは互いに対立し合い、相容れないが(ここに優劣関係はない)、同時にまさにその対立によって互いに結びついている(相互媒介)。最後には二つがアウフヘーベン(aufheben, 止揚:「否定の否定+持ち上げる」の意味)されることによって、両者が“合体”し、“対立”が克服され、問題が解決される。それは、成長へと向かう思考プロセスである。

 そのような“建設的な思考の枠組み(フレームワーク)”を提供するものとして、この“共存共栄”の考え方を再評価したい。企業経営において、仕入先や販売先との関係や合弁先との関係、社内での部署間の関係など、あらゆる二者間の利害が対立する局面において、交渉が暗礁に乗り上げた際に、ブレイクスルーして、両者の利益を実現するための思考プロセスを提供するものと言えるからである。また、このようにして見い出される“相手方の利益”をも考慮した解決策は、当然ながら相手方にとっても受け入れやすいものであり、こちら側から言えば、相手方を納得させやすいことは言うまでもない。

 Copyright © 2017 Yuki Miyazaki All rights reserved.

#共存共栄

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