• 宮崎 勇気

8.まとめ-人生も仕事もすべては“心の持ち方”次第 35

8.まとめ-人生も仕事もすべては“心の持ち方”次第 35

 第二に、『過去の封印を解いて受け入れる』ということである。過去の傷つき体験が邪魔をして、物事を否定的に捉えてしまうため、これを“受け入れる”ことによって、解消しようとするものである。そのために村松氏は、『おかげで日記』をつけることを推奨する。これは、『~のせいで』『できなかったこと』という過去の否定的な体験を見直して、今の自分にとってプラスの影響を与えている「おかげでポイント」を捜し、『~のおかげで』『今こんなことができる』というように書き直して行くというものだ。

 これは、米国に始まった“神経言語プログラミング(NLP)”の様々な手法の内の『意味のリフレーミング』と同じ手法と言えよう。『リフレーミング』とは、フレームを掛け替える、視点(認知の枠組み)を変えるということだ。目の前の現象を否定的、悲観的に捉えているときに、現象自体は変えられないが、その捉え方を変える。つまり、視点を変えて肯定的、楽観的に捉え直し、“別の良い意味”を見つけることである。例えば、コップに水が半分入っているという事実に対して、『もう半分しか残っていない』と否定的、悲観的な捉え方をしていたときに、視点を変えれば、『まだ半分残っている』と肯定的、楽観的に捉えることができる。

 松下幸之助は、このリフレーミングの技術を自然に体得していたものと考えられる。特に若い頃の松下幸之助の境遇は、『家が貧しかった』『生来体が弱かった』『学歴がなかった』という“三重苦”とも言える過酷なものであった。それらの一つひとつが、普通“人生の失敗の原因”ともなりうるものである。それが3つ重なっていた。にも拘らず、松下幸之助は、人生にも仕事にも大きな成功を収めた。それは、これら3つの天から与えられた“宿命”のプラス面を見出して最大限に活かしたからであると言えよう。

 この点松下幸之助は、次のように述べている。「今思えばこういうことはいえるのかもしれません。それは、運命というものを自分なりに、あるいは、自然のうちに前向きに生かそうとしてきたということです。「家が貧しかった」ために、丁稚奉公に出されたけれど、そのおかげで幼いうちから“商人としての躾”を受け、“世の辛酸”を多少なりとも味わうことができた。「生来体が弱かった」ために、人に頼んで仕事をしてもらうことを覚えた。「学歴がなかった」ので、皆自分より偉く見え、常に人に教えを乞うことができた。だから、多くの人の知恵を集めることもできたのだと思う。「お金がない」から、事業を始めてからも、一歩一歩着実に計画を立てて、資金のダム、信用のダム、設備のダムといった小さなダムを社内にいくつも作り(“ダム経営”)、銀行さんが与えてくれる信用の範囲内で融資を受けて、事業をやってきた。そのおかげで不況でも好況でも一貫して自己のペースで活動することができたのだ。こういうように、自分に与えられた運命をいわば積極的に受け止めそれを知らず識らず前向きに生かしてきたからこそ、そこに一つの道が開けてきたとも考えられます。」

 それは、天性の楽観的な性格や積極性に加えて、松下幸之助が“より明るい物の見方”を意図して“選んだ”からだということもある。松下幸之助は言う。「物事には様々な見方があり、一見マイナスに見えることにも、それなりのプラスがあるというのが、世の中の常である。そうであるなら、同じ物を見、同じ事態に直面してもより心豊かになれる見方を選んでいくというのがより豊かな人生に通ずる道ではないでしょうか。」「忙しさや慌しさにとらわれず、一息入れて、様々な見方をし、より明るい物の見方を選んでいきたいものだと思うのです。」(「人生談義」より)

 悲観的な物の見方をする人は、世の中御先真っ暗というように1点の光もないかのように考える。しかし、松下幸之助は、そうではなく、どのような現象にも必ずプラスの面があると言うのである。中国の陰陽の思想のように陰と陽とは一体であって、どちらの側面にスポットを当てるかで見え方が変わってくるものだ。しかも、陰と陽、プラスとマイナスのどちらに意識をフォーカスするかは自分自身が選択することができるのだというのである。そして、『より明るい物の見方を選んでいく』ことを提唱しているのである。まさにリフレーミングである。このような物の見方をするならば、“過去のトラウマ”などはそもそも生じ得ない。

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