• 宮崎 勇気

8.まとめ-人生も仕事もすべては“心の持ち方”次第 26

8.まとめ-人生も仕事もすべては“心の持ち方”次第 26

 “信念”とは、自分が本当に正しいと思っていることであり、潜在意識のレベルにある、いわば“心のソフトウエア”である。それは、いわばナビゲーション・システムのように、ある目標の達成に向けて、限りなく現状を認識しては必要な軌道修正を施し調整し続けるものである。私たち人間は、知らず知らずの内に、自分の中にある“信念”に従って、物を考え、行動しているのである。

 松下幸之助は、このような“信念の持つ力”を明確に認識し、それを活用したのである。松下幸之助は言う。「人間が自らの願いを実現するためには、それを実現するにふさわしいものの考え方や心の持ち方、態度や行動をあらわしていくことが肝要である。」

 私たち凡人は、目の前の方針や計画や施策などの具体的な手段自体を問題とし、議論検討することが多いが、松下幸之助は、それらのもっとずっと上流にある『心の持ち方』自体を問題とし、そこに手を打たなければならないと強調するのである。そして、ここでいう『心の持ち方』とは、漠然としたものの考え方ではなく、潜在意識のレベルにおいて“(強固な)信念”と化した『心の持ち方』を意味している。つまり、自分の心の中に“自分の願いを実現する”ために『適切な心の持ち方』を持つことができれば、それは、自然と自身の物の考え方や行動として現れてくるからである。その結果、自分の願いは実現される。

 そして、事業の経営において、成功するために『適切な心の持ち方』を集大成したものこそ、松下幸之助の主張する『正しい経営理念』であった。従って、先にも述べた通り『正しい経営理念』というものは、「単に紙に書かれた文章であっては何にもならないのであって、それが一人ひとりの血肉となって、はじめて生かされてくるのである。」(「実践経営哲学」p.79)と松下幸之助は強調するのである。その意味は、『正しい経営理念』の一つひとつの概念も、単に頭で知識として理解するだけではなく、経営者自身の“強固な信念”となるまで“そうありたいと強く願う”ことによってはじめて『血肉とな(る)』り、『生かされてくる』ということである。

 この点、例えば、『衆知を集めること』について、松下幸之助は次の様に述べている。「衆知を集めようと思えば、やはりまず、“衆知を集めたい”という気持ちを強く心に持つことです。そういうものが心にあれば、それはその人の態度物腰にあらわれて、おのずと衆知が集まるようになってくるものです。」(「経営のコツここなりと気づいた価値は百万両」p.69) 

 また、“強固な信念”のレベルに達した“願望”はその“実現”の可能性について“迷い”や“疑い”“不安”がない。『必ず実現する』ということを含めて“信念”となっているからである。それは、“願望実現”への過程において遭遇する様々な“障害”や“困難”にも、心が折れることがなくなるという“力”を与えてくれる。松下幸之助は、経営者たる者は、『必ず成功すると考える』ことが不可欠だと強調するのも、この点からである。つまり、失敗するリスクを無視して無理に『必ず成功すると考える』のではなく、“成功した姿”を自分の心の中に描き、何度も自分に繰り返し言い聞かせて、それを“強固な信念”とせよということである。

 さらに、松下幸之助は、「信念のあるところに熱意が生まれ、熱意のあるところに信念が生まれる」と述べ、“信念”から生まれる“熱意”が“願望実現”に向けての“推進エネルギー”を生み出し、直面する“困難”や“障害”に対して意気消沈し“諦める”ということなく、それを乗り越えて行く“力”を与える。また、“信念”が生み出す“情熱”があるからこそ、目の前に訪れるヒントやチャンスも見逃さず、的確に捕まえることができる。

 松下幸之助は言う。「正しい熱意のあるところ、必ず経営成功の道が拓けてくる。熱意は成功へのハシゴである。」「“どうしても二階に上がりたい”と願う人こそが梯子という工夫を考え出すのである。」「如何に才能や知識があっても、熱意の乏しい人は“描ける餅”に等しい。」

 目標の実現を“強固な信念”とすることの具体的な効果としては、意識がその目標にフォーカスされると、脳の機能によりそれに関連する情報が自動的に地引網のように集まってくる(“焦点化効果”)ため、その目標実現のための手段・方法も後からわかるようになったり、その実現へのヒントやチャンスを見逃さないということがある。この点、松下幸之助は次の様に述べている。「事を成し遂げるには、まずその実現への願いを“強固な信念”にまで高める。そういうものがあれば、そのための手段、方法は、必ず考え出されてくる。」

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