- 宮崎 勇気
8.まとめ-人生も仕事もすべては“心の持ち方”次第⑭
8.まとめ-人生も仕事もすべては“心の持ち方”次第⑭
第十一に、『衆知を集めること』である。
松下幸之助は言う。「いかにすぐれた人といえども人間である以上、神のごとく全知全能というわけにはいかない。その知恵にはおのずと限りがある。その限りある自分の知恵だけで仕事をしていこうとすれば、いろいろ考えの及ばない点、かたよった点も出てきて、往々にしてそれが失敗に結びついてくる。」(「実践経営哲学」p.85)
人間は、いろいろなものにとらわれがちである。特に自分は一番可愛いから、自分の利害や感情などの私心にとらわれることが多い。そうすると、自分の得になることや自分の好きなことばかりを見ようとし、聞こうとし、考えようとする。逆に、自分の損になることや嫌いなことは見ようとしなくなり、聞こうとしなくなり、考えようとしなくなる。それによって、人は物事を客観的に正しく見ることができなくなって、無意識のうちに認識から削除したり、自分の都合のいいように歪めて解釈・評価してしまう。松下幸之助はこれを『色がついたり、ゆがんだレンズを通して何かを見るようなものである。』(「実践経営哲学」pp.110-111)と表現している。
従って、『群盲象を撫でる』というインドの格言にある通り、自分には必ずしも物事の全体像は正しく見えてはいないことを前提とした方がむしろ間違いがないとも言えよう。
そのような人間の認知の欠缺や歪みを補完・矯正するものが、他人の物の見方であり考え方である。松下幸之助の指摘する通り、どんなに優れた人間にもその知識や情報、知恵には限界があるのであるから、できる限り多くの人の意見を聞くことによってそのような欠缺や歪みを補完・矯正することが特に経営者にとっては極めて重要である。
それ故、松下幸之助は言う。「衆知を集めた全員経営、これは私が経営者として終始一貫心がけ、実行してきたことである。全員の知恵が経営の上により多く生かされれば生かされるほど、その会社は発展するといえる。」(「実践経営哲学」p.84)そして、「それなしには真の成功はあり得ないであろう。」(「実践経営哲学」p.85)と断言するのである。
そのために大切なのは、『経営者の心構え』であると松下幸之助は強調する。つまり、経営者は「衆知を集めて経営をしていくことの大切さを知って、日頃からつとめてみなの声を聞き、また、従業員が自由にものをいいやすい空気をつくっておくということである。」(「実践経営哲学」p.86)また、「できるだけ仕事をまかせて部下の人びとの自主性を生かすようにしていくこと」によって、「その場その場で、それぞれの人の知恵が最大限に発揮され、会社全体としては、みなの衆知が生かされることになる。」(「実践経営哲学」p.86)
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パナソニック株式会社の創業者である“松下幸之助の経営哲学”の現代の諸問題 への応用として、最近の話題等をテーマにしたブログです。最新の記事は、 「松下幸之助、パナソニックの惨状に現経営陣を叱る!③」です。