• 宮崎 勇気

(2)一商人なり③“感謝の心”“謙虚な気持ち”を忘れない⑥


(2)一商人なりとの観念を忘れず:

  ③“感謝の心”“謙虚な気持ち”を忘れない ⑥

 そして、松下幸之助は、“感謝の心”の意義を、さらに発展的に捉える。曰く、「人間は一人の力で生きているのではなく、自然の恵みや他の人々の働きによって生きている。このことを知り、そこに深い感謝と喜びを味わい、自然の恵みや人々の恩に対して報いていくという気持ちを持つこと。使命を遂行させていただくことに感謝・喜びを感じる。すると、“無限の活力”が湧き起こり、“事を成していく”上で非常に大きな力となる。また、物の価値を高める-物をよりよく活用できるし、すべてが“喜び”となり、心も明るく、他とも調和し、“共存共栄という姿”を生み出しやすい。」

松下幸之助は、人間社会は、お互いに“与え合い”をして成り立っているとし、一人ひとりが受け取る以上に与えることに務めることによって、社会全体が発展し、繁栄していくのだと考えた。曰く、「持ちつ持たれつという言葉もあるが、この世の中は、お互いに与え合い、与えられ合うことによって成り立っている。・・・聖書の中にも、「与うるは受くるより幸いなり」という言葉があるというが、人間とは、他からもらうことも嬉しいが、他に与え、他を喜ばすことにより大きな喜びを感じるというところがあると思う。そういう喜びをみずから味わいつつ、しかも自分を含めた社会全体をより豊かにしていくことができるのである。」(「松下幸之助一日一話」p.175)ここでも、松下幸之助は、利他的な人間の脳の本質を見抜いて、それを活かそうとしているのである。このような“与え合い”“持ちつ持たれつ”という人間社会の構造を認識すれば、お互い様として「人々の恩に対して報いていく」という気持ちにもなる。

先に見たように、松下幸之助は、「社会の必要があって商売をしているのだ」という“使命感”とともに、「そういう聖なる仕事をさせてもらっている」という“感謝”を明確に持つことを求めた。このような“社会の必要を満たす”“使命”を遂行させていただくことへの“感謝”というものを、信念として持つことができれば、そのような使命を遂行するプロセス自体が“限りない喜び”に変わり、“結果”が出る前のプロセスの途上において、脳内物質のドーパミンが分泌され、脳が活性化されて、潜在能力が如何なく発揮されるようになる(“プライミング効果”)のである。このように“感謝すること”は、これから使命を遂行して行こうとする自分に先に大きなパワーを与えてくれるのだ。「感謝の心が無限の活力をも生み出す」という点は、このような意味に解釈することができる。

このように見てくると、「一商人なりとの観念」の三つの意味は、それを実践する場合には、むしろ今見てきた順序とは逆の順序で実践していくべきであり、その順で行うことによって、その効果も最大限に発揮しうるものと考える。この点、松下幸之助は、必ずしも明確に述べていないが、以上の考察からは、そのように考えるのがより合理的な結論と言えるのではないだろうか。

即ち、まず「感謝する」ことによって、心の中の不平や不満、あるいは怒りなどの否定的な感情とエネルギーを解消し、“私心へのとらわれ”から抜け出して、“とらわれない素直な心”になり、意識を内から外へ向け、視野を拡げ、それ以外のことにも心を解き放つとともに、顧客に向かって「恩に報いていく」無限の活力(パワー)を得る。そのようにして“我執”を消して、あるいは、抑えて、「相手(顧客)の立場に立って考える」ことにより、本当に相手に成り切ることができ、“顧客が真に求めるもの”に気づくことができるのである。それこそ、本当に「人々の役に立つ」ことであり、それを実現していく。その一方で「収支を立てる」知恵と工夫を凝らす。そして、それらを“感謝の心”が生み出す無限の活力「人々の役に立つ」のだとの“使命感”をもって、遂行して行く。そうすれば、途中で遭遇する如何なる困難や苦痛をも乗り越え、実現していくことができるのである。

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#一商人なりとの観念を忘れず

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