• 宮崎 勇気

(2)「一商人なり」①商売の本質を分かっている③


3)お客様大事の心に徹する

(2)「一商人なりとの観念を忘れず」

   ①商売の本質を分かっている ③

 次に、この“商人の使命”“商売の本質”を事業活動の中で真に実践して行くためには、ある事業や製品がうまく行くかどうかを社内で検討する際に、それが“社会的にする必要があるかどうか”“人々の役に立つかどうか”の点から実際に判断することが重要である。つまり、この“商人の使命”“商売の本質”を単なる“建前”とするのではなく、実際の事業活動の中で判断基準として最優先して適用し、そこに意識をフォーカスして事業活動を推進して行くということである。

 ただ、そうは言っても、実際の事業経営においては、他にも“考えなければならない様々な要素”があり、そのために“総論賛成、各論反対”という状況を引き起こしている。ところが、松下幸之助は、我々が“考えなければならない様々な要素”と思い込んでいるすべてのことは、“二次的なもの”だと断言し、切り捨てている。曰く、「商売の正しい姿は、社会の求める道をひたすら考え、人々の身になってその要望を満たすところにあります。」「自分は、ただ世間の求めるところに対して、省みて過ちなきを期してゆけばいいのだ。それ以外のことには心を煩わす必要はない。」ここで、“世間の求めるところ”は、“人々の役に立つもの”と同じものと言ってよい。(なお、コストについては、勿論考える必要があるが、「収支を立てる」のところで後述する。)

 実際に経営がうまく行っていない企業の多くでは、この“それ以外のこと”にあまりにもとらわれ、それらを優先し、心を煩わせ過ぎているのだ。その多くが、“私の都合”であることは、上に見た通りである。そして、松下幸之助は、この“削除”のメカニズムを逆に活用し、事業にとって本当に大切な“人々の役に立つこと”に意識をフォーカスさせる(“焦点化”)とともに、その反面として、それ以外のことを視野から“削除”することによって、それらの“二次的なこと”に心を煩わせることのないようにしたのである。一つのことに集中すればするほど、それ以外のことが削除されるというわけである。

 さらに、興味深いのは、松下幸之助は、「人々の役に立つこと」自体を“自らの喜び”としていたということである。曰く、「物が売れるということは、われわれが汗水たらしたものが役立つか、役立たないかということなのであります。役立つということはうれしいもので、役立たないということは、非常に悲しいことであります。」前述の通り、人間には他人のために何かをすることを喜ぶという“利他的な性質”があるということを松下幸之助は、自らの体験から知っていた。しかも、人々の役に立った“結果”として、うれしいという感情が湧いてくることは当然であるが、より重要なことは、それに向かって事業活動を行うという“プロセス”自体が既に“喜び”となっているということである。前述したプライミング効果である。そのことによって、“人々の役に立つ”という仕事に、いわばワクワクしながら“愉快に”没頭しているフローの状態が維持され、脳内物質ドーパミンが分泌されて、脳が活性化し、創造力と集中力も増し、潜在能力が大いに発揮されているのである。“利他性”という“人間の本質”を最大限活かそうとするものである。

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#一商人なりとの観念を忘れず

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