• 宮崎 勇気

(3)“商いの原点”②-「どうすれば、人々に心から喜んでもらえるか」


(3)“商いの原点”②-「どうすれば、人々に心から喜んでもらえるか」

 これに対して、“どうすれば人々に心から喜んでもらえるか”という“心の持ち方”は、立ち位置が“顧客となる人々の側”にあり、“人々の視点”から“人々が心から喜ぶのはどのような場合か”“そのために自社は何ができるか”という点に意識をフォーカスするものである。もちろん“自分(自社)の利益”を全く考えないわけではないが、まず最初の段階では“自社の利益”のことは、一旦脇に置いて、それを敢えて忘れて、“人々を喜ばせること”だけに意識をフォーカスしていくところがポイントなのである。先に述べたように、人の意識の座は一つしかないからだ。

 では、なぜその点に意識をフォーカスするのであろうか?

 松下幸之助は、「ものみな原因あり」と述べ、「一定の成果をあげようと思えば、それに相応しい原因をつくらなければならない。」と考えた。とすれば、ここでは、商売が成功するのに相応しい原因を創ればよい。

 つまり、前回述べた通り、商売や事業活動を行う際に、売上や利益などの“結果”に意識をフォーカスしても、何の知恵もアイデアも出ないばかりか、かえって売上や利益の“取らぬ狸の皮算用”をして、顧客の求めるものから離れてしまい、うまく行かない。ボーリングに喩えれば、ストライクを目指そうとしても、妙に力が入ってかえって“あるべき投げ方”から離れてしまい、失敗するのと同じである。

 そこで、そのような“結果”に着目するのではなく、“目指す結果”を生み出すのに“最も相応しい原因”は何かということに着目して、それを探求し、見出して、それを創るべく、そこに意識をフォーカスしていく。そして“商売を成功させるのに相応しい原因”こそ、“人々を心から喜ばせること”なのである。

 製品やサービスを通して人々を心から喜ばせ感動させることができれば、その人は、必ずと言ってよいほど、単なる顧客を越えて、いわゆる“ファン”となり、自らリピーターとなるばかりか、その商品やサービスの良さを“口コミ”で友人や知人に熱く語り、伝えてくれる。つまり、営業マンの役割を果たしてくれるのだ。すると、それを聞いた友人や知人が、試してみて、気に入れば、さらにその友人や知人に伝わっていくというように、評判が評判を呼び、その輪が拡がって行って、新たな客を招き込み、確実に売上増や利益につながるのである。それは、ボーリングの例では、先に並ぶ10本のピンではなく、手前にあるガイドを見てそれを狙うのである。それに成功しさえすれば、後は“因果の流れ”で必ずストライクとなるのである。

 この「商いの原点」を具体的に実践していくためには、本気で“人々を心から喜ばせたい”と思わなければならない。そのことを繰り返し“強く願い”、それを自分の“強固な信念”となるまで高めていくことが必要である。そうすると、無意識のうちにその“信念”に沿って、それを実現する方向で考え、行動するようになる。また、“強く願う”ことにより、脳のRASの機能が“相手を心から喜ばせること”にアンテナを立てて、そのためのヒントやアイデアなどの関連する情報を“地引網”のように集めてくれる(焦点化効果)。それ故、“どうすれば人々を心から喜ばせることができるか”という、その具体的な手段や方法は、後から浮かんでくるのである。このように意識をフォーカスする先を“自己中心”から“お客様中心”へと切り換えることによって、“お客様が心から喜ぶ”ために必要な情報を集まり、そのための手段や方法を生み出すところに、この「商いの原点」という考え方の極めて実践的な意義がある。それは、松下幸之助の言う「一商人なりとの観念を忘れず」ということの第二の意味である「相手の立場に立って考える」ということを言い換えたものとも言える。

松下幸之助が、自身の“意識のフォーカスする先”として“人々を心から喜ばせること”を本当に重視していたことは、次の言葉からも窺われる。「世の中の人々が企業に対して抱く様々な要望に応じ、生活の向上に貢献することによって、企業は見返りとして利益を得ることもできるし、発展もできる。だから、大切なのは、まずお客様に喜んでいただくことで、利益だけを追い求めても、決してうまくいくものではない。」(「人生談義」より)

「商売とは、感動を与えることやな。喜びを与えることやな。与えずして何かを得ることはね、それは負債になることや。だから、いつも債権者にならんといかん。つまり品物を売って、便利で具合いい、と喜んでもらうことを先に考えんといかん、感動とか喜びを、絶えず先に与えるという商売でないといかんわね。」

では、“どうすれば売れるか儲かるか”と考えてはならないとするならば、“利益”とはどういうものなのであろうか。

この点松下幸之助は、次のように述べています。曰く、「あれ(筆者注:金)は、自然に儲かるのです。~なぜ自然に儲かるのかというと、私は一生懸命仕事に取り組んでいます。~ものをつくるときでも、これでいくら儲かるといってつくるよりも、これをつくったらみなが喜ぶだろうなあと、こういうことをまず考えているのです。婦人が第一喜ぶだろうなあと考えるわけです。」(「社員稼業」pp.265-266)求める“結果”(利益)の“原因”(人々が心から喜ぶこと)となるものさえ創り出すことができれば、後は“因果の流れ”で自然と結果(利益)が出るのは当然だからである。

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#商いの原点

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