- 宮崎 勇気
松下幸之助の“選んだ”物の考え方(5)成功するまで諦めない
3.人間大事の経営
3)松下幸之助の“選んだ”物の見方考え方
(5)成功するまで諦めない
松下幸之助は、成功するためのコツとして、“成功するまで諦めない”ということを述べている。曰く、「成功するためには、成功するまで続けることである。途中であきらめて、やめてしまえば、それで失敗である。だから、いくら問題が起こってきても、次々と工夫を凝らしてそれを解決していけばよいのである。それを、くじけることなく繰り返していく。決してあきらめない。成功するまで続けていく。そうすれば、やがて必ず成功するわけである。」(「人を活かす経営」p.215)
松下幸之助は、ここで、三つのことを言っている。第一に、成功するまで続ければ、成功するということ、そして、第二に、途中で諦めることによって、失敗が確定するということ、第三に、それ故、成功するまで諦めてはならないということである。
それでは、どうすれば「成功するまで諦めない」ことができるのであろうか?
そもそも私たちはなぜ目標を諦めるのであろうか。
私たちが諦める原因は、目標に対する自分の決意が、元々脆弱なものだったか、または、途中の障害や困難があまりにも大きいものに見えて、成功することはとても不可能と思われるからだ。
前者は、一応の決意はしていても、脆弱であり、本音のところでは、“自分には無理だ”とか、あるいは、“今のままでいい”などと思っている。つまり、顕在意識のレベルでは、決意していても、本音の部分、すなわち潜在意識のレベルのコンフォートゾーンは、実はまだ“現状”のままにある。
そうすると、そこから外に出て目標に向かおうとすると、顕在意識よりもはるかに力のある潜在意識の作用によって、コンフォートゾーンである“現状”に引き戻そうとするホメオスタシスフィードバックが働く。(苫米地英人博士のホメオスタシス仮説)それ故、途中で障害や困難に遭遇すると、それらが相対的に大きなものに見えてしまい、「目標から目を逸らして」少々の困難や障害にも容易に挫けて諦めてしまうこととなる。
とすれば、コンフォートゾーンを“現状”から“目標を達成した将来”へと移行させることができれば、顕在意識と潜在意識とが、この目標について完全に合致し、同じ方向を向き、目標達成に向けた強烈なコミットメントが生まれ、“やらずにはいられない”という意欲の塊のような状態になる。
その目標は、「自分にできて当然」「できることが自分らしい」と思えるようになり、そのような高い自己イメージに向かって「一直線に目標だけを見」て、“やり切る”ことができるのだ。そこには、“疑い”や“迷い”“不安”“恐れ”などの生じる余地はなく、従って、そもそも“諦める”という概念が入る余地もない。
それ故、目標、つまり、将来の目標が実現した姿にコンフォートゾーンを移行させることができれば、困難や障害に直面しても、ホメオスタシスフィードバックが目標実現に向けて働くから、“諦めること”は無くなる。そのためには、「必ず成功すると考えること」、それを“強固な信念”とすることである。
このように考えると、「成功するまで諦めない」ためには、その目標とするものを“強固な信念”となるまで“強く願う”ことが、その前提として不可欠であり、また、それで十分であるとも言える。
そうなれば、ヘンリー・フォードの言う「一直線に目標だけを見る」ことができるようになり、途中でどのような困難や障害に出会っても、「諦める」ことはなくなる。
そして、そのことは、後者の場合“途中の障害や困難が大きく見えて、目標達成が不可能と思えるような場合”も結局は同じである。それが不可能に思えるのは、その目標が“強固な信念”のレベルに至っておらず、コンフォートゾーンが“現状”に留まっているからである。
その意味で、途中の障害に挫けず「成功するまで諦めない」で、当初の目標を達成できるかどうかは、松下幸之助の言う通り、その願望が、“強固な信念”となっているか、それとも“単なる願望”にすぎないかによるのである。
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