• 宮崎 勇気

3)松下幸之助の“選んだ”物の見方考え方 (2)“積極の道”


3.人間大事の経営 

3)松下幸之助の“選んだ”物の見方考え方

(2)“積極の道”

 かつて新聞などで“インテリの弱さ”ということが言われた。インテリは、その頭の中にたくさんの知識が詰まっているが、その優秀さのゆえにかえって消極的になり受け身になって、才能を十分に発揮していない場合が少なくないというのだ。例えば、社長が「こんなことができないだろうか?」と問うたときに、「それはできません。なぜならば~」と言って、次々と“できない”理由を挙げる、というように、その持てる専門知識を否定的な方向に使ってしまったのでは、事業にブレーキをかけるばかりで、事業は発展して行かない。

 そうではなく、“どうすれば、それを実現することができるか?”という前向きかつ積極的な観点で物を考えることのできる人が、事業には必要である。松下幸之助曰く、「松下電器は従来、会社そのものの方針はもちろん、従業員一人一人の行き方にしても、“積極”を以って特徴としてきた。・・・極端に言えば、松下電器におけるもろもろのことは必ずしも頭が良いか悪いかでなく、積極的であるか否かによって決められるのである。・・・“積極”とは、たくましさであり、闘い取ることである。競争場裡にも臆せずに駒を乗り入れることだ。」(昭和16年6月「一分間の修養」より)

 また、二度三度やってみてうまく行かないと、直ぐに「できない」と諦めてしまう場合がある。ここで、少ない経験から“できない”と考えてしまうというのは、前述した人間の脳の特徴の一つである“一般化”、即ち数少ない経験から一般的にこうだと“決めつける”ことの弊害である。

 実際には“できる可能性”があるのに、“できない”と決めつけてしまうことで、その“可能性”を自ら遮断し、どうすればできるかということを考えようともしなくなる。従って、それ以降は、その可能性を実現する手段や方法に関する情報も“削除”され、“盲点”となって認識できなくなるか、認識しても“歪めて”評価し、“使えない”と“決めつけ”てしまう結果、本当にできなくなってしまうのである。

 松下幸之助は、このような否定的な方向での一般化を排除する。曰く、「物事というものは、できることでも、それをできないと思っている限り、やはり実際にできないのではあるまいか。反対に、できそうもないことでも、なんとかやればできると考えて努力すれば、往々にして案外とできるものではないかと思う。・・・少々のことでできないと考えることは、むしろ人間のすぐれた可能性を押しつぶしてしまうことにもなるのではなかろうか。」(「決断の経営」p.123)

 さらに、特に困難な状況において、“心の持ち方”や“物の見方”を切り換えて、前向きに挑戦していく“たくましさ”と“積極性”を求めた。曰く、「困難な時にこそ、みずから夢を開拓する、国家の運命を開拓するというふうに結びつけゆくところに人間のたくましさというものがあると思います。」(「わが経営を語る」p.45)

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