• 宮崎 勇気

(7)自分の人生を演出し、かつ、演じる-「人生は一つの芝居のようなもの」②


3.人間大事の経営

2)人間の本質を活かす-「すべては心の持ち方次第」「自分の心を使いこなす」

(7)自分の人生を演出し、かつ、演じる-「人生は一つの芝居のようなもの」②

 もう一つ指摘しておきたいのは、スケールの大きな人間観を構築することによる“自己イメージ”の拡大とその効果である。

 私たち人間は、「自分とはこういう人間だ」という自分自身について信じているイメージを潜在意識レベルの中に持っており、それが自分の信念の一部を形成している。そして、人間が、“信念”に沿って、それに合致するように考え、行動するのと同様に、信念の一部である“自己イメージ”に沿って、それに合うような価値観や信念を持ち、物事を考え、行動し、感情を持つようにできている。

 自己イメージは、居心地のいいコンフォートゾーンを形成し、それまでの自己イメージとは異なる新しい考えや行動を取ろうとしても、ホメオスタシス(恒常性維持機能)、即ち脳が現状を維持しようとする自己修正機能のフィードバックが働き、そこに引き戻されてしまうのである。その結果、“自分には無理だ”と決めつけて挑戦しないとか、“自分が変われない”ということとなる。(ホメオスタシス仮説)即ち、その“自己イメージ”の枠から外に出て、考えたり行動したりすることは極めて困難である。

 そのような自己イメージというものは、自分が任意に作り上げたものかと言えば、必ずしも自分自身が意識して“選択”した上で構築したものばかりではない。批判能力の未熟な子供の頃に親や学校の先生、あるいは、テレビなどから繰り返し聞かされたことがそのまま蓄積され、知らず知らずの間に創り上げられたものもある。また、その後批判能力がついてきた後に、自分の様々な経験を通じて自己イメージを形成していく場合も、それらの経験を自分自身の独自のフレームを通して“削除”“歪曲”“一般化”して知覚した上、評価・解釈して、作り上げた独自のものである。このようにして形成される自己イメージは、“現実の自分”とは、実は“似て非なるもの”であって、それ自体“仮想の自己イメージ”と言ってよい。そのようなプロセスを経て、意図せずして“制約的な自己イメージ”を作り上げてしまい、それが自分に仮想の“限界”を設定してしまうことがある。

 それらの“自己イメージ上の限界”は、“仮想”のものであるにも拘わらず、本人にとっては“内部表現”の中にある“真実”であるから、“現実に存在する限界”として機能する。「自分にはできない」「自分には無理だ」と。しかも、自己イメージは、潜在意識のレベルにあるから、本人はそのことに気がつかないまま、自己イメージに沿って無意識の選択をし続けることになる。

 松下幸之助は、私たち人間がこのように“制約の多い自己イメージ”を自ら創り上げてしまうことが多いということを直感的に感じ取っていた。そのような“制約の多い自己イメージ”を無限大に拡げる機能を持つのが、松下幸之助の“人間観”なのである。人間は、「宇宙や自然、社会を生成発展させて行く使命を持った万物の王者」であり、「その使命達成のために無限の可能性を持つ偉大な存在」であり、「ダイヤモンドの原石」であるとした。そして、このような考え方は、決して荒唐無稽のものではなく、現代の脳科学や遺伝子学の観点からも「人間の脳の無限の可能性」を肯定する学者が存在することは既に述べた通りであす。

 このように、一切の“制約”を取り払った、いわば人類共通の自己イメージを“信念”として持つことによって、個人レベルにおいても、“自己イメージ”を自ら不当に制約して、“限界”を創ることなく、自分の潜在能力を如何なく発揮することが可能となる。松下幸之助の人間観は、実際には目の前に“可能性”があるにも拘わらず、自ら作り上げた“仮想の限界”の故に“自分にはできない”と決めつけ(“否定的な方向での一般化”)て諦めてしまうのではなく、“現に存在する可能性”をすべて余すことなく活かし切ること、その可能性の実現に向けて、諦めず考え抜いて知恵と工夫を生み出し、実行し切ることを可能にするところに、その実践的な意義があると言えよう。

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#自分の人生を演出しかつ演じる

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