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松下幸之助の経営哲学-その真髄の理解と実践のために-

世の中に優れた経営者と言われる人は多くいますが、”経営の神様”と言われたのは、松下幸之助だけです。なぜでしょうか?それは、卓越した観察力で様々な人々を観察する中で、人間の”無限の可能性”と現実の姿としての”心の弱さ”という相矛盾する本質を発見し、そして、それらの双方の本質を共に活かそうとして、”自分の心を使いこなす”こと、また、それを応用して他人を使うことを極めたからだと言えるのではないでしょうか。つまり、松下幸之助の経営哲学は、”人間学の集大成”とも言えるものです。

本サイトでは、これまで必ずしも十分に解明されなかった松下幸之助の経営哲学の機能とメカニズムを現代の神経科学や脳科学、心理学、神経言語プログラミングなどの知見にもとづいて解明し、その全体像を明らかにして体系化したものです。これまで松下幸之助の経営哲学は知識として頭で理解することはできても、本当の意味で実践することは必ずしも容易ではありませんでした。しかし、本サイトが解明したその経営哲学を”血肉”となるほど自分自身の”信念”とすることができれば、その経営に、また、人生に自然と実践することができるようになるでしょう。そうすれば、結果は自ずとついてくるものだと言えましょう。                                    

 

                           2016年5月1日 著者 宮﨑 勇気                 

5)組織の力を最大限に発揮させる(3)“衆知を集める”②

June 9, 2017

 

 5)組織の力を最大限に発揮させる

 

(3)“衆知を集める”②

 

 それは、どんなに優れた人でも同様であるとし、人間の知恵など“闇夜の提灯”ほどにしか闇夜を照らし得てはいないと言うのだ。それ故にこそ、できる限り多くの人の目を通して物事を様々な角度から見ることによって、初めて、いわばジグソーパズルが完成に向かって行くように、その全体像を客観的に見ることができるのだと考えるのである。また、一人の人間だけの“知恵”には限界があるから、できる限り多くの人の様々な“物の考え方”により様々な角度から考えることによって、“より良い知恵”が生まれてくるというのである。このようにどんなに優れた人間にも“限界”があることを前提として、その“限界”を克服し、“物の見方”において、視野を拡大するとともに、“物の考え方”において、様々な観点から、様々な思考プロセスによって考えることを可能とする点に“衆知を集める”ことの実践的な意義と重要性がある。

 

 ところが、世の中では、“能力のある者”ほど、人の意見を聞こうとしないという傾向がある。例えば、たまたま条件が揃ったために事業に成功した経営者は、その成功体験を過大評価して、“自分の実力”で成功したのだと“勘違い”し(“歪曲”)、あるいは、自身の能力を過信して、“謙虚さ”を忘れ、“傲慢”となると、「自分が一番賢いのだ」と思い込み(“一般化”)、部下が馬鹿に見えてくる。すると、そのような部下に考えさせたり、その意見を求めることは無駄だと感じて、常に自分の考えを一方的に部下に押し付けて、従わせるようになる。このようにして、衆知を集めようとはしない。特に傲慢になったワンマン経営者によく見られる現象である。そうなると、部下の報告などの“情報”も、自分の都合のいいものだけを聞き、それ以外を無視し(“削除”)、あるいは、自分の都合のいいように歪めて解釈し(“歪曲”)、常に“自分は正しい”と決めつける(“一般化”)。そして、経営環境や市場、顧客などの現実の姿が客観的に見えなくなって、“裸の王様”と化するのである。

 

 そのような経営者の姿について、松下幸之助は、次のように述べている。曰く、「昨今とかく、自分を正しとするあまり、他を排するに急な傾向が見受けられるようだが、これはまさに馬の目隠しである。これでは事が小さくなる。」“自分は常に正しい”“自分は誰よりも賢い”ということに“とらわれ”て、そのことを守るために汲々として、それを裏付ける情報を懸命に探す一方、それを否定することにつながる情報を“目隠し”して“削除”してしまうというのである。

 

 しかし、人間である以上、どんなに優れた人でも、常に正しい経営判断をすることは至難の技である。ましてや、現代のように経営環境が複雑で、かつ、目まぐるしく変化して行く状況の下では、経営判断は、極めて困難となりつつある。先に述べた通り、人間の“知覚”と“評価”・“解釈”のプロセスにはその人の信念や価値観を軸として“削除”“歪曲”“一般化”のメカニズムが働くからである。“闇夜の提灯”だけで、闇夜の全体を判断しようとし、自分の色メガネで評価・解釈し、判断しようとするからである。

 

 また、一方で、上司が部下の意見を無視し続けると、部下は段々と意見を言わなくなり、さらには自ら考えようともしなくなる。そして、遂には、必要な情報を集めるということすら関心を失ってしまうこととなる。その結果、“知恵”や“情報”の結集という点でも、また、組織のメンバーのモチベーションという点でも、組織全体の力を極端に弱めることとなる。そのような組織の力は、そのトップの力量を超えることはないのである。“独善”の弊害である。

 

 また、先に述べたように、世の中が複雑化し、顧客の求めるものが多様化し、かつ、変化する現代においては、これまで以上に、顧客と直接接している最前線に重要な情報がある。20世紀型の規格大量生産というビジネスモデルはもはや通用しない。それ故、それらの最先端の顧客の声や顧客と直接接している営業マンの顧客ニーズについての想像力やアイデアが極めて重要である。それらの“衆知を集める”ことが、次の戦略を生み出すからである。逆に、それらを“放置する”ことは、社内にある“宝の山”に気づかず、手を付けないに等しい。

 

 さらに世界がグローバル化していく中で、例えば、日本で成功したビジネスモデルを海外でもそのままの形で強引に展開して失敗する企業もある。日本での成功体験から、海外でも成功するはずだと思い込んだり、本社の優秀なスタッフが考えたモデルだから、どこでも通用するはずだと決めつけて、現地のローカル社員の意見を聞こうとしないからだ。しかし、現地にはその国特有の文化や生活習慣、考え方がある。日本で成功したやり方であっても、そのままでは日本以外の国では通用しないことも多い。これに対して、事前に現地のローカル社員の意見を聞こうとする企業は、そこで、その国の特殊事情を知ることとなり、そのビジネスモデルを修正し、その国に適合するものにした上で、実施することによって、成功につなげている。

 

 あるいは、燃費不正事件を起こした三菱自動車では、外部から来た経営陣と開発の現場部門との心理的障壁が生じて、経営陣が、人手不足やコスト不足などの開発現場の抱える問題に無知なまま、通常ありえない5回もの燃費目標の引き上げを行ったという“無理”が引き起こしたものと考えられる。それは、また、経営陣に向かってものが言えない風土と経営陣が現場の実力を把握したり、悩みを聞こうとしなかったことが大きな原因となったのである。

 

 松下幸之助は、このような部下の意見を聞こうとしない経営者について、次のように述べている。曰く、「人の言に耳を傾けない態度は、みずから求めて心を貧困にするようなものである。どんな賢人でも、その人ひとりの知恵には限りがあって、だから自分の知恵才覚だけで事を運べば、考えがかたくなになる。視野がせまくなる。」(「続道をひらく」pp.164-165)

 

 先の例のように、“失敗の原因”を事前に洗い出し、そこに手を打つためにも、“衆知を集める”ことは、重要であると言えよう。そして、そのような失敗の原因は、ほとんどの場合、環境や他人にではなく、自分自身の考え方の中にあることが多い。それ故、松下幸之助は、「失敗の原因はわれにあり」と言うのである。

Copyright © 2017 Yuki Miyazaki  All rights reserved.

 

 

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