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松下幸之助の経営哲学-その真髄の理解と実践のために-

世の中に優れた経営者と言われる人は多くいますが、”経営の神様”と言われたのは、松下幸之助だけです。なぜでしょうか?それは、卓越した観察力で様々な人々を観察する中で、人間の”無限の可能性”と現実の姿としての”心の弱さ”という相矛盾する本質を発見し、そして、それらの双方の本質を共に活かそうとして、”自分の心を使いこなす”こと、また、それを応用して他人を使うことを極めたからだと言えるのではないでしょうか。つまり、松下幸之助の経営哲学は、”人間学の集大成”とも言えるものです。

本サイトでは、これまで必ずしも十分に解明されなかった松下幸之助の経営哲学の機能とメカニズムを現代の神経科学や脳科学、心理学、神経言語プログラミングなどの知見にもとづいて解明し、その全体像を明らかにして体系化したものです。これまで松下幸之助の経営哲学は知識として頭で理解することはできても、本当の意味で実践することは必ずしも容易ではありませんでした。しかし、本サイトが解明したその経営哲学を”血肉”となるほど自分自身の”信念”とすることができれば、その経営に、また、人生に自然と実践することができるようになるでしょう。そうすれば、結果は自ずとついてくるものだと言えましょう。                                    

 

                           2016年5月1日 著者 宮﨑 勇気                 

5.3)経営環境の変化の“萌し”を敏感に感じ、善処していく ①

April 12, 2019

5.社会とともにある経営

3)経営環境の変化の“萌し”を敏感に感じ、善処していく ①

 

 先に述べたように、松下幸之助は、『成功するには、それにふさわしい原因をつくる』こと、つまり“成功の原因”を見極めて、そこに経営資源と活動を集中する一方、事前に“失敗の原因”を無くして行くことによって、予め用意周到な計画を立てれば、少なくとも“大きな失敗”はないはずだと考え、事前の計画をこの二つの側面から徹底して検討することの重要性を強調した。

 

 しかし、他方では、松下幸之助は、「めくらさんはこけない」ということを言う。つまり、目の見える普通の人たちは、目が見えるが故に、前ばかりを見て足元をよく見ないから、足元の石に気づかず、転んでしまうことがある。しかし、目の見えない人は、目が見えないが故に、かえって足元を杖で確かめながら慎重に歩を進めて行くから、逆に転ぶことがないというのだ。

 

 曰く、「めくらさんは、普通あんまりころんでケガをしないそうです。しかし目の見える達者な人間は、ともすれば、ケガをしたり、ひっくり返ったりする。これはなぜかというと、めくらさんというものは、~その足元でもわからんから、~必ず杖をついてトントントントン・・・ニ尺ほど先を杖で確かめて歩く。そうするとケガもしないんですね。私は商売というものはそんなものだと思うのです。結局、お互いが、これはこうなるという、一応の目安をつけますが、実際はやってみないとわからない。だからめくらさんと同じようなやり方をすれば、私はケガせずして商売は伸びるものであれば伸びていく。」(「繁栄のための考え方」)

 

 一見矛盾するようなメッセージである。前者の考え方からは、成功の原因と失敗の原因を踏まえて用意周到な計画ができたのであれば、後はそれをやり抜くだけであって、変更する必要はないし、すべきではないようにも思われるからである。

 

 しかし、松下幸之助は、如何に用意周到に立てた計画でも、「実際にはやってみないとわからない」ものであり、それは“一応の目安”に過ぎないと考えたのである。つまり、“自分が用意周到に立てた計画”というものにも“とらわれない”ということである。

 

 「戦争論」で有名なクラウゼヴィッツが「戦争では当初の計画にはない、思わぬ出来事が次々に起こる」「一切が最初の目算を下回り、所定の目標のずっと手前にしか達しないことはざらだ」として“摩擦”という概念によって強調している点こそ、まさにこの計画とのズレである。

 

 松下幸之助は、元々人間には、現実の世界全体のごくわずかな部分しか見えておらず、いわば“闇夜の提灯”のような頼りないものだと捉えていた。むしろ、人間にはわからないことの方がはるかに多く(99%と言う)、“暗中模索”の状態なのであるから、人間の小さな知恵才覚だけで経営をしてはならないと常々戒めていた。

 

 従って、どんなに周到にあらゆることを予測して計画を立てたつもりでも、やはり人間のすることであるから、そこには、常に“限界”がある。それは、計画の前提である事実の認識や評価、解釈、さらには、それらの事実を踏まえた施策の立案、評価、選択において、人間には物事の一部しか見えていないということ(“削除”)に加えて、人間の知覚と解釈における他の特徴である「歪曲」「一般化」のメカニズムも働き、“自分のみたいものを見たいように見て、そして、決めつける”また、“自分の考えたいものを考えたいように考えて、そして、決めつける”可能性が常にあるからだ。そこに“誤り”が生じる余地がある。

 

 しかも、経営環境(計画の前提たる事実)は、計画を立てたときとそれを実行する時点とでは、往々にして変わることがある。松下幸之助は、「この社会はあらゆる面で絶えず変化し、うつり変わっていく」(「実践経営哲学」p.102)ものであることを明確に認識していた。それ故、計画の実行段階においては、経営環境の変化による計画との“ズレ”が常に起こりうる。

 

 このように見てくると、むしろ“限界”や“誤り”、“変化”という様々な要因から計画と現実との“ズレ”が生じることがむしろ“当たり前”なのだとの認識に立って、「ニ尺ほど先を杖で確かめて歩く」こと、即ち、計画時に前提としたことの“誤り”の可能性や周囲の環境の“変化”に常に注意を払いながら、あるいは“誤り”の表れや変化の“予兆”を敏感に把握しながら、その“ズレ”に敏感に感じ取って、それに俊敏に対応していくことが重要なのである。

 

 松下幸之助は言う。「だから、その中で発展していくには、企業も社会の変化に適応し、むしろ一歩先んじていかなくてはならない。」(「実践経営哲学」p.102)

 

(注)上記の「めくらさん」という言葉は、現代では、差別用語として適切ではありませんが、松下幸之助の当時の思想
   を忠実に再現するとの観点からそのまま使用していますこと、読者各位におかれましては、ご了承下さる様お願い
   いたします。

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      「私たちは“仮想現実の世界”に生きている!5)歴史の書き換え:勝者が歴史をつくる27」です。

 

 

 

 

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