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松下幸之助の経営哲学-その真髄の理解と実践のために-

世の中に優れた経営者と言われる人は多くいますが、”経営の神様”と言われたのは、松下幸之助だけです。なぜでしょうか?それは、卓越した観察力で様々な人々を観察する中で、人間の”無限の可能性”と現実の姿としての”心の弱さ”という相矛盾する本質を発見し、そして、それらの双方の本質を共に活かそうとして、”自分の心を使いこなす”こと、また、それを応用して他人を使うことを極めたからだと言えるのではないでしょうか。つまり、松下幸之助の経営哲学は、”人間学の集大成”とも言えるものです。

本サイトでは、これまで必ずしも十分に解明されなかった松下幸之助の経営哲学の機能とメカニズムを現代の神経科学や脳科学、心理学、神経言語プログラミングなどの知見にもとづいて解明し、その全体像を明らかにして体系化したものです。これまで松下幸之助の経営哲学は知識として頭で理解することはできても、本当の意味で実践することは必ずしも容易ではありませんでした。しかし、本サイトが解明したその経営哲学を”血肉”となるほど自分自身の”信念”とすることができれば、その経営に、また、人生に自然と実践することができるようになるでしょう。そうすれば、結果は自ずとついてくるものだと言えましょう。                                    

 

                           2016年5月1日 著者 宮﨑 勇気                 

(2)人を使いこなす ②“愉快に働く”-“仕事三昧の境地”

March 24, 2017

4)人を使いこなす

 

(2)個人の能力を最大限に発揮させる

 

②“愉快に働く”-“仕事三昧の境地”

 

 松下幸之助は、実によく仕事を楽しんだ。文字通り“寝食を忘れて”仕事に没頭し、自ら“仕事三昧の境”と呼ぶ領域にまで達していた。曰く、「仕事にはまりこみ、時間も忘れ、疲れも知らず熱中する。仕事から手を離すのが惜しくてならない。ただ働くことが愉快でたまらない。~仕事にわれを忘れてしまうという、いわば仕事三昧の境に入りうることは、まったく楽しいことである。また、この境地こそ、真剣に働く者のみの知る極楽の天地であり、人の知れぬ楽しい世界である。」

 

 そして、このように“愉快に働く”ことの“楽しさ”を社員にも同じように味わってもらいたいと考えていた。そして、それが社員一人一人の能力を最大限に活かすことにつながることに気づいていたのである。曰く、「自分として今一番に深く考えていることは、大勢の従業員諸君が、毎日を愉快に働いておられるかどうかという点である。願わくは一人残らず、その日その日を愉快に働いてもらいたい。そのときに真に会社の発展も各人の向上も望みうるのである。・・・会社のためにも、自分自身のためにも、愉快に働けるようにひたすら心掛けていただきたいと痛感する次第である。」(1939年4月13日朝会にて)

 

 そして、そのためには、やはり“強く願う”ことと仕事と一体になることが肝要だと言う。曰く、「皆さんも仕事三昧の境地に達することを希望し、これに向かい努力してほしい。それには仕事を敬い、一心不乱に働かねばならない。器用に小手先だけで処理してはダメである。真心こめて力いっぱい働かねばならない。軽率に取り扱ったり、ぐずぐずしていてはダメである。仕事に徹し、仕事とぴったり一つになりきらねばならないのである。」(「松下幸之助発言集29」)

 

 まず、“愉快に働く”ということは、“主体的に生きる”ことが前提となっていると言える。受け身で“やらされる”仕事は楽しくはないからだ。松下幸之助の述べた通り、「人生においても仕事においても、あくまでも自分自身が主人公であり、受身ではなく、主体的に生きてこそ、感激感動も生まれてくるということである」からだ。

(注)「主体的に生きる」との松下幸之助の考え方については、以下のURLを参照下さい。

    https://www.minamotoyori305konosuke-shintou.com/blank-4/2016/10/29/shutaitekini-ikiru

 

 また、松下幸之助は、人間の本質の一面として次のような点を指摘する。曰く、「結局、人間には“欲と二人連れ”で、利によって動くという面と、使命に殉ずるというといささか語弊があるが、世のため人のために尽くすところに喜びを感ずるといった面とがあるわけである。」(「人事万華鏡」p.170)このような人間の本質から、“社会の発展の原動力となる”という“聖なる仕事”をさせてもらっていることに“感謝”し、“社会の役に立つこと”“人々に心から喜んでいただくこと”をやっているのだという、その目的や現に役に立ったという結果から“喜び”が生ずる。しかも、ここで重要なことは、それだけでなく、それに向かう実現のプロセスそのものが“喜び”となっているという点である。「仕事に徹し、仕事とぴったり一つになりき(る)」「ただ働くことが愉快でたまらない。」という松下幸之助の言葉が、そのことを示している。

 

 この点、既に述べた通り、現代の脳科学の知見からも、このようなワクワク、ドキドキする状態で何かをすることが、最も脳が活性化し、ドーパミンが分泌されて、創造力が最大限発揮されると言われている。(“プライミング効果”)これは、まさに心理学者のチクセント・ミハイが主張する「人間の内的経験の最適状態」である“フロー”そのものと言ってよい。“フロー(最適経験)”とは、“人が最も幸福に感じるのはどういう場合か”ということを同氏が追求して行った結果、到達した概念である。それは、「目標を志向し、ルールがあり、自分が適切に振る舞っているかどうかについての明確な手掛かりを与えてくれる行為システムの中で、現在立ち向かっている挑戦に自分の能力が適合している時に生じる感覚」をいう。挑戦する目標にすべての注意を集中させて、全力で取り組み、自意識は消え、時間の感覚は歪められ、長い時間もあっという間に過ぎてしまうと感じる。人間は、そのようなときに“最も大きな幸福感”を感じることができるのだという。そして、それ自体が非常に楽しく感じ、内発的報酬をもたらすものであるため、活動することそれ自体が目的となり、自己目的化していくという。(「フロー体験 喜びの現象学」チクセント・ミハイ著)

 

 つまり、松下幸之助は、“愉快に働く”こと自体によって、「ただ働くことが愉快でたまらない」という“大きな幸福感”を感じていたのである。

 

 それでは、現代の企業の社員たちは、果たして“愉快に働(く)”いているだろうか?

 

 そのような人もごく一部にはいるであろうと思われる。しかし、多くの企業では、その逆の状態ではないだろうか。例えば、売上や利益などの数字目標でがんじがらめに管理され、日々追及されるような状態である。このような状態では、人間は、そのような管理上のハードルをクリアすることばかりに意識がフォーカスされてしまい、それ以外のもっと重要なことが“削除”され、また、管理される“不安”と“恐れ”から“受身”になり、“自己防衛的”になってしまい、その持てる能力は、ほとんど発揮できなくなってしまう。近時、不正会計事件を起こした東芝に限らず、多かれ少なかれ、多くの企業に一般的に見られる現象である。

 

 この点、「7つの習慣」の著者であるスティーブ・R・コヴィー教授は、現代企業の共通に抱える問題の一つとして「今日管理職の人々や組織は、社員を奮起させて、最高の才能と貢献を引き出すことができずにいる」ことを挙げ、「人は、自分がどのように扱われているかによって、仕事にどれほど自分を捧げるかを決めている」として、「反抗または拒否する」から「クリエイティブに躍動する」までの6つの段階を示している。そして、人は、「公平な報酬をもらい、まっとうな扱いを受け、クリエイティブな使われ方をされ、原則に基づく方法で人間の要求に応えるような仕事に従事している人だけが、喜んで協力し、心からコミットし、クリエイティブに躍動することを選び取れるのである」とする。(「8つの習慣」スティーブ・R・コヴィー著pp.49-52)つまり、会社側が社員をどのように扱うかということが、社員が“愉快に働く(き)”、能力を発揮するかどうかを決定するというのである。

 

 この点、松下幸之助の人の使い方は、これらをすべて満たしていた。「入社後10年で家が持てる」と言われた、手厚い福利厚生制度は、「公平な報酬」を保障し、人の“短所”よりも“長所”“持ち味”を信じて、それを見出し、活かそうとした“適材適所”の人の使い方は、「まっとうな扱い」を与えた。さらに、社会に貢献する高い目標で“夢”を提示し、社員を“利他の本質”に目覚めさせ、高い目標を要求して、信頼して任せる。さらに社員に“経営者の意識”を持つこと、つまり、与えられた仕事を“一つの事業”と捉えて、経営者として事業を発展させて行くことを大いに奨励した。それらは、社員の主体性を尊重し、経営者の意識で社会に貢献するという高い目標に向けて挑戦させる、まさに「クリエイティブな使われ方」であった。

 

 このような松下幸之助の人の使い方は、コヴィー教授の説によれば、社員を奮起させて、「クリエイティブに躍動する」という最高レベルの才能と貢献を引き出したと言えよう。このような「愉快に働く」ことの“効果”が如何に大きいかについて、松下幸之助は、次のように述べている。曰く、「私はもちろん、諸君各自が仕事三昧にふけり、力強く事業を進めることができるならば、必ずや良品を多量に生産でき、代理店、販売店の渇望を満たしうるとともに、ひいては社会に貢献させてもらうことができると信ずるのである。」(「松下幸之助発言集29」)

 

松下幸之助は、さらに続ける。曰く、「・・・いいかえれば、社会に貢献させてもらうには仕事三昧の境にいたらなければならないのである。そこに事業も繁栄し、日本産業の復興再建も可能となるのである。」(「松下幸之助発言集29」)つまり、“社会の発展の原動力となる”という高い志から設定される高い目標を実現していくためには、ただ普通に努力するというだけでは不十分であって、従業員全員が“愉快に働く(き)”“仕事三昧の境”に入って、潜在能力を最大限に発揮することが不可欠であり、それなくしては実現することができないとまで松下幸之助は考えていたのである。

Copyright © 2017 Yuki Miyazaki  All rights reserved.

 

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