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松下幸之助の経営哲学-その真髄の理解と実践のために-

世の中に優れた経営者と言われる人は多くいますが、”経営の神様”と言われたのは、松下幸之助だけです。なぜでしょうか?それは、卓越した観察力で様々な人々を観察する中で、人間の”無限の可能性”と現実の姿としての”心の弱さ”という相矛盾する本質を発見し、そして、それらの双方の本質を共に活かそうとして、”自分の心を使いこなす”こと、また、それを応用して他人を使うことを極めたからだと言えるのではないでしょうか。つまり、松下幸之助の経営哲学は、”人間学の集大成”とも言えるものです。

本サイトでは、これまで必ずしも十分に解明されなかった松下幸之助の経営哲学の機能とメカニズムを現代の神経科学や脳科学、心理学、神経言語プログラミングなどの知見にもとづいて解明し、その全体像を明らかにして体系化したものです。これまで松下幸之助の経営哲学は知識として頭で理解することはできても、本当の意味で実践することは必ずしも容易ではありませんでした。しかし、本サイトが解明したその経営哲学を”血肉”となるほど自分自身の”信念”とすることができれば、その経営に、また、人生に自然と実践することができるようになるでしょう。そうすれば、結果は自ずとついてくるものだと言えましょう。                                    

 

                           2016年5月1日 著者 宮﨑 勇気                 

(6)快楽苦痛の原則を克服し、さらに逆に活用する ②

October 7, 2016

3.人間大事の経営

 

2)人間の本質を活かす-「すべては心の持ち方次第」「自分の心を使いこなす」

 

(6)快楽苦痛の原則を克服し、さらに逆に活用する ②

 

 次に、人間の脳は、“快”につながるような思考や行動を取るとき、最大限働くという意味での“快”の原則の活用である。

 

 

 企業の中で自分の力を100%発揮している人は、実は意外に少ない。むしろ、特に自分の仕事に意義を見出すことができず、“仕事は生活のため”と割り切って、与えられた目の前の仕事を言われた通りにただこなすだけの消極的な“サラリーマン根性”に陥ってしまっている場合も少なくない。そうなると、仕事は、面白いものではなくなり、“言われたことをただやるだけ”で、“苦痛”以外の何物でもなくなる。仕事は“義務的”なものとなり、“~しなければならない”という発想で仕方なしにやる。そうなると、言われたことを言われた通りにこなすこと以外は何も考えなくなり、脳も働かないし、“創造力”も発揮されない。“思考停止”の状態に陥る。そのような社員ばかりの会社は、いくら大企業で頭数が多くても、組織全体の力強さに欠けるし、組織の目標達成もおぼつかない。

 

 

 これに対して、仕事で“自分が本当にやりたいこと”をしているときには、その仕事をすること自体が楽しくてしかたがない、ワクワクしながら夢中になって没頭している。このようなときには、脳が活性化し、“創造力”と“潜在能力”が発揮される。これが、快の原則である。

 

 

 例えば、自分の“人生の目的”と言うべきものと会社の目指す方向とが一致しているという場合はその典型例である。そして、松下幸之助は、正にそのような状態で働いていたのである。「ただ働くことが愉快でたまらない」、本人は、「仕事三昧の境地」という言葉でそれを表現している。

 

 

 松下幸之助は、創業からまだ間もない昭和7年に知人の熱心な勧めに根負けして、天理教の本山を見学に行き、そこで全国から集まってきた天理教の信者たちのひとり一人が喜々として働いている姿に感銘を受け、自身の会社でも“社員たちが喜々として仕事に励む”状態を再現しようと知恵を絞った。その答えが、この“快”の原則の活用であった。曰く、「人間は利によって動くという面もあるが、使命を遂行する、使命に殉ずるといったことにそれ以上の高い喜びを感じるものでもある。」(「松下幸之助一日一話」p.63)

 

 

 実は、このことは、現代の脳科学においても、証明されている。東京大学薬学部の池谷祐二教授によれば、人が寄付をしたときには、脳の報酬系が活動をすると言う。曰く、「相手のためのチャリティーというより、自分の快楽のためという側面もある。慈善活動は、「俺って、こんなに人の役に立っている。すごいねえ。」という自己陶酔に似ているのです。~それが、脳の仕様だから、それでいいって言いたいのです。そういう個人の快楽欲求を基盤としながら、結果として、スムーズで総体的な人間社会を形作っていく。これこそが脳のおもしろい働きなのです。」(「脳はこんなに悩ましい」池谷祐二/中村うさぎ共著pp.47)

 

 

 松下幸之助は、このように、人間には、人の為に役立つことをすることで、自分も喜ぶという利他的な本質があることを自らの経験から看破し、私的欲望を公的欲望に転換させることによって、それを実現しようとした。そして、事業の目的を「社会の発展の原動力となる」「事業を通じて社会の発展に貢献する」「綱領」に定め、その年、昭和7年を使命を知った年という意味で、「命知元年」と名付け、その年の五月五日に、その使命を全社員に高らかに宣言したのであった。それに感銘を受けた150名余りの社員全員が次々に壇上に登り、所感を述べたという逸話が残っている。当時は第二次世界大戦後の復興期であり、貧乏の克服ということが社会的課題であり、しかも、社員たちにとっては、自分や家族の問題でもあったことから、松下幸之助の提示した使命に直ぐに心から共鳴することができた。会社の目指す方向と社員たちの目的が一致したのである。

 

 

 これらの“社会の発展の原動力となる”という“公のため”の事業目的は、“仕事の捉え方”を変え、“新たな意義”を提示することで、人間の“利他的な本質”を覚醒させ、脳の“快”の原則を全開させて、人の為に役立つことをする仕事自体がワクワクして楽しくて仕方がないという状態を生み出した。そのような“~したい”という “快”の状態が、脳を活性化させ“創造力”と“潜在能力”を発揮させるとともに、目の前の仕事を“苦”から“快”へと変えてしまう。

 

 人々の役に立つという“結果”が出たから嬉しいのではなく、結果が出る前の目標に向かっている“プロセス”自体において、即ち、仕事をしているそのときに、脳内物質の報酬系ドーパミンが分泌され、創造力と潜在能力が発揮されるのである。(“プライミング効果”)この点、脳機能学の苫米地英人博士によれば、人間の脳には、報酬系ドーパミン経路があり、自分にとって気持ちいいことがあると、報酬としてドーパミン(脳の奥から分泌される、快楽を感じる脳内物質)が分泌されるのであるが、その報酬であるドーパミンがその出来事が起こるよりも先に流れるようになっているという。それは、まだ起きていない将来の出来事に対して、今気持ちいい、という状態である。

 

 

 これは、人間はその将来の出来事に向かって今エネルギーを使うことを無理矢理やらせるための回路であり、プライミングと言われ、種の保存に必要な行為に典型的に見られる。さらに、人間の場合には、その報酬系ドーパミン経路が前頭前野にまで及んでいるため、抽象度の高い情報に対してもプライミングを働かせることができると言う。

 

 

 あるいは、眠っていた遺伝子がオンになって、脳が活性化して創造力や潜在能力が発揮される。それは、心理学者チクセントミハイが主張した“フロー”(内的経験の最適状態)という最高に“集中”し、“充実感”と“幸福感”を感じている状態である。

 

 

 このようにして、それまでは苦労と思われたことも、逆に楽しいことに変わる。このように、松下幸之助の経営哲学は、“快”の原則を活用して、“苦”を“快”に変え、仕事がワクワクして楽しく、また、最高に“集中”し潜在能力を発揮しうるフロー状態を作り出すという機能を持つものと考えられる。

 

 

 松下幸之助は、自分だけでなく、全社員にそのような状態になってもらいたいと考えたのだ。そのように全社員が自分の能力を出し切る状態で仕事をすることによって、「力強く事業を進めることができる」ようになる。さらには、逆に、全社員がその潜在能力を出し切らなければ、“社会に貢献する”というような“高い目標”は実現できないとさえ考えていたのである。

 

 

 松下幸之助は、全社員が“愉快に働く”ことが重要だと考え、社員に次のように語りかける。「自分として今一番に深く考えていることは、大勢の従業員諸君が、毎日を愉快に働いておられるかどうかという点である。願わくは一人残らず、その日その日を愉快に働いてもらいたい。そのときに真に会社の発展も各人の向上も望みうるのである。」(1939年4月13日朝会にて)天理教の本山で信者たちの喜々とした働き振りを目の当たりにして以来、松下幸之助が“快”の原則とその活用を如何に重要と考えていたかがよくわかる。

 

 

 また、例えば、社員に対して、「社員稼業」という考え方を提唱し、社員一人ひとりが“経営者の意識”を持つことを提案したことも、“快”の原則の活用例と言える。つまり、与えられた仕事を一つの“事業”と見做し、自分はその事業の経営者だという“経営者の意識”を持つ。

 

 

 それによって、与えられたことを義務としてただこなすのではなく、自ら経営者としてその“事業”を発展させていくという“高い視点”に立ち、かつ、“自己中心的な考え”から解き放たれて“広い視野”から、“事業の発展”の観点から発想し、考えることができるようになる。経営者としての“アンテナ”を立てることによって、今まで見えなかった関連情報が集まってきて(“焦点化効果”)、様々な知恵や工夫が生まれてくる。

 

 

 さらに、“自分の事業”と捉えていわゆるPDCAを回していくようになる。それまではつまらない、“苦痛”でしかない仕事のように見えた目の前の仕事が、実に楽しい仕事に生まれ変わり、「ああしたい」「こうしたい」という“~したい”という考えも出てきて、“愉快”でワクワクしながら、仕事をするようになるから、脳が活性化され潜在能力を発揮できるようになる。

 

 

 曰く、「・・・そういうふうな考えに徹しられたならば、みなさんの頭からは想像もできない、偉大な力が生まれてくると思うのであります。」(1963年度経営方針発表会にて)

 

 

 重要なことは、与えられた仕事は同じでも、その人の“心の持ち方”如何によって、その仕事を“苦痛”と見るか“快楽”と見るかが違ってくること、そして、それが違えば、実際に脳の活性化の状態に影響を与え、“発揮される能力”とその“結果”が大きく異なってくるということである。

Copyright © 2016 Yuki Miyazaki  All rights reserved.

 

 

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