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松下幸之助の経営哲学-その真髄の理解と実践のために-

世の中に優れた経営者と言われる人は多くいますが、”経営の神様”と言われたのは、松下幸之助だけです。なぜでしょうか?それは、卓越した観察力で様々な人々を観察する中で、人間の”無限の可能性”と現実の姿としての”心の弱さ”という相矛盾する本質を発見し、そして、それらの双方の本質を共に活かそうとして、”自分の心を使いこなす”こと、また、それを応用して他人を使うことを極めたからだと言えるのではないでしょうか。つまり、松下幸之助の経営哲学は、”人間学の集大成”とも言えるものです。

本サイトでは、これまで必ずしも十分に解明されなかった松下幸之助の経営哲学の機能とメカニズムを現代の神経科学や脳科学、心理学、神経言語プログラミングなどの知見にもとづいて解明し、その全体像を明らかにして体系化したものです。これまで松下幸之助の経営哲学は知識として頭で理解することはできても、本当の意味で実践することは必ずしも容易ではありませんでした。しかし、本サイトが解明したその経営哲学を”血肉”となるほど自分自身の”信念”とすることができれば、その経営に、また、人生に自然と実践することができるようになるでしょう。そうすれば、結果は自ずとついてくるものだと言えましょう。                                    

 

                           2016年5月1日 著者 宮﨑 勇気                 

(5)“削除”“歪曲”“一般化”のメカニズムを矯正し、さらに、逆に活用する ②

September 16, 2016

3.人間大事の経営

 

2)人間の本質を活かす-「すべては心の持ち方次第」「自分の心を使いこなす」

 

(5)“削除”“歪曲”“一般化”のメカニズムを矯正し、さらに、逆に活用する ②

 

 第二に、“歪曲”のメカニズムの活用である。

 

 先に述べたように、目の前の“現象”自体に“特別な意味”があるわけではなく、私たちがどのような“心の持ち方”をしているか、つまり、どのような“価値観”や“信念”のフレームを持つかということが、その目の前の現象に“意味”を与えているのである。つまり、私たちの“心の持ち方”が目の前の現象の捉え方を決定する。

 

 例えば、否定的な心を持っていると、それに否定的な意味を与えてしまい、それに翻弄されることになる。昔から“坊主憎けりゃ袈裟まで憎い”と言われるが、そのような歪んだ意味づけをしてしまうことで、相手に対して誤った対応をしてしまうこととなるのもその例と言えよう。しかし、そこで、より適切な“心の持ち方”つまり“価値観”や“信念”のフレームに取り替えることができるならば、その現象に“自分にとってより有益で適切な意味”を与え、自ら主体的に状況をコントロールしていくことができるようにもなる。

 

 松下幸之助は、その経営哲学上“有益”だと考えられる概念を“フレーム”として“歪曲”のメカニズムを活用することにより、目の前の現象の“意味”を“自分にとって役に立つ意味”に転換したのである。

 

 例えば、通常誰もが悪いものと捉える“不況”という目の前の現象ですら、「この世に存在するものはすべて必要である」というフレームで眺めてみると、その“いいところ”が見えてくる。不況だからこそ、会社の悪いところがよく見えるようになるし、社員たちも“何とかしなければ”と思うから、一致団結して“改革”もやり遂げることができる。また、不況だからこそ、経営者が育つという利点もある。このようにして“不況”こそ“経営改革のチャンス”だと肯定的、積極的な意味に転換することができ、実際に“改革”を実行して“不況”をも活かしたのである。松下幸之助は言う、「不況またよし」と。

 

 また、「悩んでも悩まない」と言う。「悩みを持つことは、人間にとって大事なこと」であり、「プラスにつながる場合が多い。したがって、悩みに負けてしまわず、自分なりの新しい見方、解釈を見出して、その悩みを乗り越えていくことが大切である。」(「松下幸之助一日一話」p.82)“悩み”を持っても、それを乗り越えていくために、“心の持ち方”を変えて、“新たな解釈”を見出せと言っているのだ。

 

 また、例えば、困難や障害に直面したときには、私たちは、意気消沈して、目標達成への意欲を失い、知恵も出ないということになりがちである。しかし、「社会は限りなく生成発展していくものだ」との「生成発展の原理」のフレームから見ることによって、それらの困難や障害の“意味”を「発展へのプロセスの一部」であり、さらには「発展への転機」であると、前向きかつ積極的に捉え直すことができ、困難や障害に立ち向かう意欲も湧いてくる。また、意識が“生成発展”ということにフォーカスされ、“発展への転機”として活かしていくためのヒントや情報がそこで初めて見えてきて(“焦点化効果”)、具体的に困難や障害を克服する方法も生み出すことができる。

 

 曰く、「何が起こっても、生成発展の一こまやと思うたら、恐れるものはありませんわ。」松下幸之助は、このような“歪曲”のメカニズムを最大限に活用した物の見方を生涯貫いた。曰く、「すべての事業を“生成発展”という心の窓を通してながめ、かつ、考えることは、私の人生観の中軸であり、我が社経営の根本理念の一つである。」(社史資料巻頭言より)

 

 また、“人間には無限の可能性がある”“誰にも必ず持ち味がある”というフレームで部下を見るから、一見“短所”に見えるところも、すぐに“ダメな奴”というレッテルを貼ってしまうことなく、短所も長所も実は表裏一体であり、両者併せて、その人の特徴、つまり“持ち味”だと捉えることができ、その“持ち味”が活きる環境を与えてやれば、その人の持ち味が活きて、当初は“短所”に見えた特徴が“長所”に変わるのである。

 

 これは、現代の神経言語プログラミング(NLP:Neuro-Linguistic Programming)においては、リフレーミングと呼ばれており、人の認識を一瞬にして、変えてしまうほど劇的な効果があるとされる。リフレーミングとは、質問をすることによって、質問をされた方の意識がそのことに焦点化することを利用して、物の見方(フレーム)を変化させることを言う。 
 

 この神経言語プログラミングは、1975年に米国のカリフォルニアで、言語学者のジョン・グリンダー博士とリチャード・バンドラー氏によって共同開発された。米国の3人の天才セラピスト、即ち、家族システム療法の母ヴァージニア・サティア、ゲシュタルト療法の創始者フリッツ・パールズ、天才催眠療法家の精神科医ミルトン・H・エリクソンの言葉使いや行動、無意識の動きを詳細に観察することを通じて、彼らのトラウマの解消やうつ病の治療を短時間で行う卓越したコミュニケーションには、共通した脳の処理パターンがあることを解明し、その脳(神経、言語)の働き(プログラム)を誰にでもわかるように体系化したものである。

 

 このような誕生の経緯から、当初は、精神的な病気を治す方法として使用された。現在では、それがコミュニケーション全般(自分自身とのコミュニケーションを含む)における効果的な方法として応用されるようになってきている。さらに、人はどのようにして外部の情報を知覚し、処理し、それが行動にどのように影響を与えるのかという脳の仕組みに踏み込み、脳の特徴を最大限に活用して、自分自身とどのようなコミュニケーションをとれば、“なりたい状態”になれるのかを示し、“願望や目標の実現”という目的にも活用されるようになってきており、米国を始め世界のビジネス界でも普及しつつある。

 

 このように神経言語プログラミングは、目的の達成に向けて、自分の内的状態をコントロールする能力とコミュニケーション能力を飛躍的に高める実践的な方法論であり、脳を使いこなすための“脳の取扱説明書”とも言われている。その意味で、この方法論は、「自分の心を使いこなす」ことを手段とした松下幸之助の経営哲学の実践に相通じるものがあり、また、松下幸之助の経営哲学を実践する様々な局面で活用することのできる技術であると言える。

 

 松下幸之助は、この神経言語プログラミングで言うリフレーミングという技術を自身の経験から自然に身に付けており、目の前の困難や障害も、“心の持ち方”を置き換えることによって、その捉え方が変わり、

前向きな意味に変わりうるということを多くの局面で実践してきた。そのような極めて実践的な技術が、松下幸之助の経営哲学の中には織り込まれているのである。そのことは、次の言葉から明らかである。

 

 曰く「同じ一つのことでも、それをどう見るかという見方によって、色々と違った見方ができる。そうして、その見方によって、自分自身の気持ちが変わってくる。どういう見方をしようと自由である。だから、少しでも自分のプラスになるような見方をすればよい。それで、自分の人生も明るくなる。・・・要は、どういう見方をするかによって、物事が良くも悪くもなる。だから、お互いによりよい見方をさがすことである。衆知を集め、自問自答をくり返して、それを求めていく。そういうことが、お互いの仕事の上でも、経営の上でも、また人生の上でも大切なことではないだろうか。」(「人を活かす経営」pp.218-221)

Copyright © 2016 Yuki Miyazaki  All rights reserved.

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